「Quan lang」歌はテイ族の結婚式には欠かせないものです。

春は、温かい結婚式を通して結ばれる多くのカップルたちの季節です。北部山間部ハザン省クアンビン県に住む少数民族テイ(Tay)族の人々にとって結婚式は、単にカップルから夫婦になるだけでなく、「Quan lang」歌を通して自らの民族のユニークな文化を紹介する機会でもあります。「Quan lang」歌の歌い手は、新郎、新婦の幸福を願い、教訓的な比喩を込めた歌を歌っています。

「Quan lang」歌は、各段階に合わせた詩歌が組み込まれており、テイ族の人々の結婚式につながる良き風俗となっています。ティエンイエン村イエンチュン集落に住む「Quan lang」歌の歌い手であるホアン・バン・ビエンさんは次のように明らかにしました。

(テープ)

「我が家では、私は、祖父母から『Quan lang』歌を教わった三代目です。祖先から受け継いだ伝統文化こそは、テイ族のアイデンティティでもあると認識しており、15歳時からこの歌を勉強したのです。私は『Quan lang』歌のメロディを通して、テイ族の風習を守り続けたいと思います」

テイ族の結婚式の一部

「Quan lang」歌の歌い手は、新郎側の代表者として、両家の顔合わせから、挙式までの儀式に参加します。テイ族の風俗では、新婦を迎えに行く新郎の代表団には、一人の「Quan lang」歌の男性歌い手に、新郎、付添人、そしてその友だちがいます。この場合、歌い手は、新郎側の代理人として全ての儀式を執り行います。

ビエンさんは次のように述べています。  

（テープ）

「結婚前に、新郎側は、新婦の家へ持参品を持っていく『新婦を出迎える男の人』を見つけておきます。この人は、有力者であり、仕事の成功と家庭円満を両立していなければなりません。新婦側も、新郎側の各演目に応対するため、『新婦を見送る女の人』を見つけておきます。この二人は『Quan lang』歌の歌い手としての役割を果たします」

「Quan lang」歌は、日常生活における洗練された上品な振る舞い、嫁が夫や夫の家族に対してどのように振る舞うべきか、婿が妻や妻の家族に対してどのように振る舞うべきかといった内容が盛り込まれています。テイ族の従来からの結婚式で歌われる「Quan lang」歌は、新婦側が新郎側の代表団を迎える時、新郎に新婦を引き渡す時、新婦を見送る時という3つの部分に分かれ、それぞれ部分によって異なる内容で歌われます。歌い手のビエンさんによりますと、「Quan lang」歌を歌う時には、楽器は使わず、主に両家の若者たちの素朴で愛情にあふれた掛け合いが特徴です。

（テープ）

「結婚式の日に、新郎側の代表団が結納品を持参しながら、新婦の家に着くと、祭壇に供物を捧げた後、新郎側の代理人は『Quan lang』歌を歌います。その直後、新婦側の代理人は、謝礼としての『Quan lang』歌を歌います。歓談の時間が終わると、新郎側の代理人は、新婦側に『よい時間帯となったので、新郎の実家に新婦を迎えることを許可してください』と言った後、『Quan lang』歌を歌います」

（テープ） 

この部分で歌われた歌の内容は、「本日、両家の家族が決めた結婚式の吉日に、お婿さん側の代表として、お嫁さんとの末永い幸せを願い、誠心誠意を込めた結納品を差し上げに参りました」との内容でした。クアンビン県に住むテイ族の人々の結婚式では多くの儀式が執り行われます。例えば、道路を横断するように紐を張る儀式、畳を敷く儀式、お客様にお茶を出す儀式などです。それぞれの儀式によって、「Quan lang」歌は異なる内容で歌われます。

ビトゥオン村の村民であるリ・ティ・コイさんは次のように明らかにしました。            

（テープ）

「私の10年あまり前の結婚式では、新婦を迎える際に歌われた『Quan lang』歌はとても意味深いものでした。両親が子供の生まれた頃から結婚するまでの世話をする過程を讃えるものです。もちろん、新郎の家族が新婦の家に来るとき、新婦の両親への恩返しとして、感謝の気持ちを込めて贈り物をしました」

現在、テイ族の挙式には昔のような時代遅れの風習はなくなり、独自の文化が染み込んだ主だった風習だけが残っています。クアンビン県文化室のグエン・ティ・トウック室長は次のように明らかにしました。 

（テープ）

「結婚式の手順が適切に表現されるように、各家庭は従来からの風習や儀式について非常に注意深く学びます。現在、クアンビン県の行政当局はテイ族の文化的価値の維持と発展を注視しています。特に、学校でも、「Quan lang」歌の歌い方法を教えています」

「Quan lang」歌の歌いはテイ族の人々にとって不可欠な文化的活動となっています。特に、テイ族の人々の生活をはじめとするベトナムの民俗文化の大きな価値を活用するために、ハザン省は「Quan lang」歌の維持と発展を推進しています。同時に、ハザン省とクアンビン県の民俗芸術家協会も、「Quan lang」歌をより多くの人に知ってもらうために、「Quan lang」歌に関する古文書や書籍の収集を進めています。