従軍記者チャン・マイ・ハイン氏(74歳)が執筆した「戦争報告1•2•3•4-75」という本は、 機密資料の公開であり、1975年4月30日にサイゴンかいらい政権が崩壊する直前の数日間を再現する真実の記録作品と評されています。「戦争報告1•2•3•4-75」が初めて出版されたのは2014年4月のことでしたが、その後、ベトナム語版は3回にわたって再版され、そして、先ごろ、初の英語版が出版されました。これは、ベトナムだけでなく、世界の人々にとってもベトナムの抗米救国闘争(ベトナム戦争)に関する貴重な資料となっています。
「戦争報告1•2•3•4-75」のベトナム語版
チャン・マイ・ハイン氏は、ベトナム南部解放軍とともに行動した従軍記者で、歴史的な1975年4月30日にサイゴン政権の大統領府(現:統一会堂)に入場した最初の記者です。その日のサイゴン解放を物語る彼のルポルタージュは、ベトナムの声放送局、ベトナム通信社、ベトナム労働党機関紙「ニャンザン」などに大きく取り上げられました。その歴史的な瞬間を目撃した人としてハイン氏は、その重要な意義を認識し、「戦争報告1•2•3•4-75」を執筆することにしました。彼は、「私は歴史の目撃者であり、貴重な資料の所有者でもあり、国民として国に対する記者としての責任感から、本書を執筆することにした」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「世の中は浮き沈みが激しいですね。戦争は誰もが欲してないし、平和は人類の渇望です。私は、事実を最後の最後まで追求したいという思いでこの本を書くことにしました。その事実は、いかなる偏見も左右できないものです。戦争で勝者であれば、何でもかんでも書いてもいい。戦争で負けた者は、何でもかんでも言い訳をしてもいいというわけではありません。事実は事実です。時間が経てば経つほど、事実が明らかになります。それで、私は事実の最後の最後まで行くことにしました。」
チャン・マイ・ハイン氏
ハイン氏は、「戦争報告1•2•3•4-75」の中で歴史の事実を尊重する方針で、自分のコメントを一つも書くことなく、サイゴン政権の立場からみた歴史の真実を再現しました。また、サイゴン政権の崩壊過程を明らかにするだけでなく、戦争そのものの現実を物語る作品であると評されています。ハイン氏はまた、次のように話しています。
(テープ)
「サイゴン政権の崩壊における事実の最後の最後は民族の勝利、共産党の指導を顕彰するものです。この本には、解放軍とベトナム共産党に関する言葉は一つもありませんが、私たちがなぜ勝利したのか、人民はどのように犠牲になったのか、解放軍はどう戦ったのか、共産党はどのように指導したのか、ということを明らかにすることができました。」
19章からなる「戦争報告1•2•3•4-75」を読むと、執筆者がサイゴン政権の全ての会議、全ての戦場、そして、サイゴン政権の将軍の脳裏にあったという感じがします。そのため、崩壊直前のサイゴン政権の姿が明らかになりました。そして、戦い続けるか、逃げるか、降伏するか、というサイゴン政権の将軍たちの心理的動揺も明白になりました。ベトナム作家協会のグエン・クアン・ティエウ副会長は次のように語っています。
(テープ)
「これは、資料を巧みに利用して巧みに書いた本です。資料の中には、戦争の両方の兵士たちの気持ちと運命が潜んでいます。数多くの資料の中から、作家はヒューマニズムを讃えました。また、どうしても屈しない、どうしても奴隷にならない、どうしても国を分断されないようにする、そして、平和への大きな渇望を持つという民族の姿は明らかにされました。」
「戦争報告1•2•3•4-75」の英語版
この作品は、ベトナム作家協会から2014年の文学賞を、そして、タイの王族から2015年のASEAN文学賞を受けました。この作品がこれらを受賞したのは、民族解放闘争を讃えることなく、人間が互いに信じ、互いに愛しあい、よりよい将来づくりのために取り組むというメッセージを発信したからです。そのメッセージを世界の人々に発信するため、先ごろ、英語版が出版されました。その英語版の出版を担当した国家政治出版社のグエン・キム・ガさんは次のように語りました。
(テープ)
「弊社は、この作品の歴史的かつ文学的な価値を認識した上で、英語版を出版することにしました。これは、世界の人々にベトナムの偉大な勝利の歴史的価値を理解してもらうためのものです。」
ベトナム戦争の最後の瞬間を客観的かつ人文的に再現した「戦争報告1•2•3•4-75」という本。それは読む価値があります。