(VOVWORLD) -ベトナム北部のクアンニン省にある世界遺産のハロン湾は、国内外の観光客を引き付けています。
ハロン湾クルーズツアーに参加すると、有名な漁村のブンビエン村を見学できます。陸からおよそ25キロ離れた所にあるこの村ができたのは1962年、今から55年前のことです。家屋は水の上に浮かんだ状態で、周りに大小の船や養殖場の生け簀が並びます。ハロン湾にある島々に囲まれていて、村人は主に魚の養殖で生計を立てていました。しかし、ここには診療所や学校などがなく、通学や病気の時などは、陸地に出なければなりませんでした。こういった不便な状況を解消し、また自然環境の保護のためにも、クアンニン省人民委員会は、ブンビエン村の全ての住民の移住を決めました。2014年、対象となる300世帯が本土に移りました。移住が完了した後は、漁村に残っている家や養殖場が観光スポットとして活用されています。行政府は、移住者の就労など生活に関しても支援を行っています。例えば、住民の自然と調和した生活と経済的な自立、天然資源の保護、海洋文化の保存などが目的となっているプロジェクトがあります。ハロン湾での環境にやさしい水産物養殖と責任ある観光業がテーマです。この取り組みは、アメリカの支援を受けて、昨年2016年から試験的に実施されています。対象はハロン漁村観光サービス生産協同組合で、陸に移住した8世帯がこのプロジェクトに参加しています。養殖場では、スズキ、タイ、ハタなど市場で高く売れる種類の魚を養殖しています。生け簀には、水の環境汚染に繋がる発泡スチロールなど従来の素材ではなく、木材や複合材を使った環境にやさしい物が使われています。プロジェクトに参加している漁業関係者は、ハロン湾で養殖を再開できるようになったのをとても喜んでいます。そのうちの1人の話です。
(テープ)
「今まで魚の養殖で生活していましたが、本土に移住してからは、やめていたんです。そんな中、環境にいい水産物養殖プロジェクトができたので、参加することにしました。進んだ養殖技術が導入されて、魚の養殖が前より簡単になりました。自分たちは、魚の稚魚を購入する資金を出しただけです。」
ハロン漁村観光サービス生産協同組合の組合長によりますと、以前は、小魚などの雑魚(ざこ)を養殖魚のえさにしたり、国の基準を満たさない飼料を使っていたということです。そのため、海域の環境が汚染されて、海草やサンゴに悪影響をもたらしていました。加えて、数百人が一定の場所で養殖を行ったことから、水産物の成育にも影響がありました。新しい養殖モデルでは、関係者に生け簀や安全なえさが提供され、養殖技術の訓練コースも実施されました。養殖魚の買い取り先も紹介するということです。ハロン漁村観光サービス生産協同組合、組合長の話です。
(テープ)
「持続可能な養殖の為には、幾つかの基本的なポイントがあります。例えば、稚魚の原産地の証明、国の基準を満たした養殖用の飼料、養殖物の厳格な検査、養殖過程での抗生物質などの不使用、などです。これらの条件を守れば、結果として収益も上がって経済的に安定します。」
一方で、漁村としてのブンビエン村は、自然に恵まれていることから、観光客を引き付ける観光スポットになっています。カヤックやボート、小舟で村を一周して、水上家屋や養殖の生け簀などを見ることができます。ハロン漁村観光サービス生産協同組合では、こういった見学ツアーを行っています。舟の漕ぎ手として村に住んでいた60人が雇用されました。毎日、数百人の観光客がこのツアーに参加するということです。
舟の漕ぎ手をしている女性の話です。
(テープ)
「この仕事での収入は、一ヶ月でおよそ300万ドン、1万5千円です。これだけでは生活に足りないですが、他の仕事よりいいと思います。舟を漕ぐ私達は、誰もが環境を守ることを認識しています。海に浮かぶゴミを見つけたら、すぐに拾います。」
このプロジェクトを行っている組織の担当者の話です。
(テープ)
「ハロン湾の環境保護と漁民の生活改善を目指すということで、この取り組みにクアンニン省の行政当局も注目しています。移住した後も漁業活動を続けたいという人の協力を得ています。こうしたプロジェクトは、ベトナムの海洋保護と開発に貢献するので、さらに広がっていくよう期待しています。」
環境にやさしい水産物養殖は、漁業関係者のよりよい生活と世界遺産ハロン湾の保全に大きな役割を果たしています。