農業や稲、米は、ベトナム人にとって馴染み深いものです。民謡や詩、歌などでは欠かせない農村部の風景のモチーフとなっています。最近では、米は、芸術の創作活動に用いられています。芸術家の器用な手で、米は美しい絵として生まれ変わるのです。こうした芸術によって、ベトナムの米の価値が広く知られることとなっています。米で作られる絵についてご紹介します。
米で作られた絵は、もともとインドの古代絵画から生まれたものです。ベトナムで知られるようになったきっかけは、ある若者たちの取り組みでした。彼らは米で制作された絵を研究し、米を炒って色をつけた後、オリジナリティーあふれる絵を作りました。米の絵の工房であるクイン・ビーのPR担当者、グエン・トゥイ・ビーさんは、次のように話しています。
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「国内外で開催された交流会に参加したことで、東南アジアや欧州諸国から来た多くの若者と出会いました。彼らは米で作られた絵を不思議そうに見ていました。この反応は誇りに思います。なぜなら、貴重な米で作られた絵を通して、母国の文化と観光スポットなどをピーアールすることができるからです。」
通常、米は食材にしか見られませんが、米の絵の制作者にとっては、炒った米はどんな色になるか、また米の形はどんな絵を作るのかといった絵の材料になります。他の手工芸品と同じように、米の絵の制作にも創意工夫や経験を重ねることが必要です。絵が出来上がるまでには、材料となる米の選択や色づけ、絵の構成など様々な工程があります。また、絵画に関する知識はもちろん、創造性も求められます。米の絵の工房、クイン・ビーで絵を制作するグエン・コア・ダンさんは次のように話しました。
(テープ) Dang
「米の絵を作るためには、審美眼や創造力、そして忍耐が求められます。できあがった絵の中には似ているものはなく、それぞれ制作者のオリジナリティーがあふれています。」
米の絵の種類は、肖像画から静物画、風景画、書道まで多岐にわたっています。その色は、材料となる米の種類によって、加熱された後に黄色、茶色、黒になります。このため、米の絵は、色彩に富んだものではなく、落ち着いた印象になります。絵のテーマは、主に農村風景です。外国人観光客にとって、米の絵は印象深いようです。タイから来ていた人は次のように話しています。
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「油絵などは身近なものですが、米の絵は見たことがありません。これを作るのには時間と忍耐が必要なはずです。米が食材としても、芸術作品の材料としても使われるのは面白いですね。」
ホーチミン市の外国人が多い地区で、北部の農村風のカフェが次々とオープンしています。これらのカフェにも米の絵が飾られています。このうちの1つのカフェのオーナーは次のように話しました。
(テープ)
「外国人が多い地区でカフェをオープンさせて、ベトナムならではのお土産や風景を紹介する初めての店になりたいと思いました。クイン・ビーの米の絵を知って、ぜひ自分の店に絵を飾って、外国人に紹介したいと思ったんです。」
米の絵はシンプルですが、それぞれが制作者の創意工夫とベトナムに対する愛があふれています。米の絵の制作者は、ベトナムの伝統文化の保存の一端を担っているといえるかもしれません。