エデ族の彫刻・造形芸術は題材からレイアウト、素材まで統一性を表しています。また、建築物に取り入れられる模様は生活に馴染みのある太陽や花、葉、動物などです。長屋はエデ族の独特な彫刻芸術を示します。玄関先の飾りとなるポーチや階段、天井の横木などに刻まれた模様は長屋の印象的なものです。ベトナム民族学博物館のリュ・フン副館長は次のように語りました。
(テープ)
「エデ族の装飾、彫刻はテイグエン地方のほかの民族と比べて、最も優雅なものです。また、テイグエン地方の共通の装飾様式の特徴を持って、詳細な描写ではなく、記述的なものです。」
屋根の骨組みの横木に彫られた動物
長屋の支柱や屋根の骨組みの中心的横木に自然世界を反映する様々な模様が彫刻されます。銅の腕輪、銅の鍋や亀、鳥、月などの模様がよく取り入れられます。さきほどのリューフン副館長は次のように明らかにしています。
(テープ)
「エデ族の室内装飾は魅力的で、支柱や骨組みの横木に集中しています。具体的にはポーチの2本の支柱や接客室とほかの部屋を区別する2本の支柱などの模様です。母系社会の象徴となる乳房と半円形の月や富の象徴である銅の鍋のほか、蟹、トカゲ、カワウソなどの模様が彫刻されています。」
階段に彫刻された乳房と半円形の月
長屋の模様は母系社会を反映するものです。家の中心にある4本の支柱には女性の乳房の模様が彫刻され、恒久的な増殖、繁栄を象徴します。これらの柱は中心の柱と見なされています。また、余裕のある家庭の長屋は骨組みの横木に竜や亀、蟹、魚、トカゲの模様が刻まれ、豊かさを表すことが狙いです。民族学博物館・屋外展示室のダム・ティ・ホップさんは次のように語りました。
(テープ)
「エデ族の芸人は骨組みの横木にトカゲを彫刻し、家族に幸運をもたらし、悪事を追い払うことを願っています。特に魚のヒレや架空の角が付いている竜の模様があります。これはエデ族の古来から伝わる模様で、ほかの民族と違っています。」
お墓に置かれた人の形をした像
エデ族の彫刻芸術は墓の模様にも表れています。職人の器用な手腕で、素敵な彫刻作品に仕上げ、美術的な価値に富んでいます。また、彫刻作品はそれぞれ信仰面での意味があります。エデ族の考えによりますと、死んだ人が早く成仏できるように、お墓に人の形をした像が入れられるのです。それは少なくとも4体の像が置かれます。一組の夫婦と妊娠中の女性、顔を手で隠した男は亡くなった主人の奴隷で、死後の世界でも寂しくないようにエデ族の日常生活が続くことを意味しています。像は木製か象牙、あるいは水牛の角などに彫られます。さらに、死んだ人の年齢や集落に対する功労などによって、像の大きさは異なります。さきほどのベトナム民族学博物館のリュ・フン副館長は次のように明らかにしています。
(テープ)
「死んだ人は別の世界で生き続けるという観念があることから、死んだ人が“あの世”に持ってゆくためのいろいろな品々が送り出されるのです。お墓に彫刻された模様はお墓を綺麗にすることが狙いです。」
エデ族の彫刻作品は洗練されたものではなく、素朴なものですが、真心を表すとされています。長い歳月を経て、エデ族は独特の文化を保存しながらも、ベトナムの他の民族の文化との調和が図られています。