(VOVWORLD) - 今回の少数民族は、ベトナム中部高原地帯テイグエン地方に居住している少数民族エデ族の儀式をお伝えします。
写真:Hoàng Anh/Báo Tin tức |
エデ族の儀式の中で最も重要なのは水源を祀る儀式です。この儀式は水を十分与えてくれた水の神様に感謝し、「これからも豊作になるよう水を与え下さい。」とお祈りするためのものです。
エデ族のどこの居住地にも、その土地の人たちが利用する水源があります。その水源は井戸あるいは谷川の水をとりやすいところにあります。エデ族は村を成すにあたり立地を選ぶときに、その地の水源をよく調べます。水を十分に提供できる水源がなければ、村の立地になり得ないということです。
テイグエン地方の文化を研究している研究者グエン・ホン・キさんは次のように話しました。
(テープ)
「テイグエン地方は雨季と乾季という2つの季節しかありません。乾季は息ができないほどとても暑くて、雨がほとんど降らない季節です。エデ族の昔話には、乾季には人間と動物が、葉についた夜の霧の水を飲まなければならないという話がよく出ています。これはエデ族にとって水の確保がとても重要な課題であることを示しています。」
毎年、収穫を終えた旧暦の12月末になると、エデ族の村は水源を祀る儀式の準備にとりかかります。村長がとり仕切る中、村人は準備作業について話し合います。村人はそれぞれの役割分担、そして準備作業を進めます。男性は村の水源を掃除したり、水源への道を補強したりします。一方、女性は家を掃除したり、儀式の供え物を用意したりします。
水源を祀る儀式の主宰役を担うのは村で威信のある長老です。エデ族の一人イ・ドゥク・エ・バンさんは次のように話しています。
(テープ)
「儀式を主宰するのは村の大きな一族の代表です。儀式で使われるお供え物はその代表が決めます。そして、儀式をどのように進めるのはその代表の思惑次第です。」
儀式の日に、水源のところで竹で作った門が設置されます。これは、その日は水汲みをしてはいけないという意味です。また、水源のところには色々な葉や草、花が飾られます。
祈祷師が村人にお供え物を配る=Hoàng Anh/Báo Tin tức |
儀式のお供え物は豚や地酒などです。お供え物が出されると、祈祷師は儀式を始めます。儀式後、村人は幸運を求めるとして水を汲んで帰ります。その一方で、儀式の主宰者は村のそれぞれの家へ行って幸運を祈ります。その後、村全体は村の集会所に集まって、歌ったり踊ったりしながら、宴会を楽しみます。
エデ族の水源を祀る儀式は信仰的なものだけでなく、水源を守る意識を村人に教える教育的なものでもあります。そして、水源のところはコミュニティの団結を強化する役割も果たしています。水源のところで話しながら、水を汲むのは今もなおエデ族の村でよく見かける風景です。