オペラのように歌垣を歌う少数民族サンチ族


ベトナム東北部に集中的に居住している少数民族サンチ族は、昔話、舞踊、民謡など豊かな民間芸能で知られています。中でも、「シンカー」(Sinh Ca)と呼ばれる歌垣は民謡の一種で、一番魅力的な芸能の一つであると評されています。

シンカーは、日常生活をテーマとしたもので、この歌垣を聞くだけで、この民族の人々の考えや心、習慣などがわかると言われています。また、日常生活の中から生まれたシンカーは日常生活から切り離せない部分のようで、現代生活の影響を受けたものの、今もサンチ族の人々がほとんど歌えています。

(歌垣のテープ)

歌垣は、他の民族にもよく歌われていますが、テイ族の「スリー」(Sli)という歌垣やキン族の「クアンホ」という歌垣はほとんど、お祭りやお正月などでしか歌われません。それに対して、サンチ族のシンカーはこの民族の血に組み込んだように、どこでもいつでも歌われます。また、終わりがないように、数日に渡ってシンカーを歌うのが普通です。

オペラのように歌垣を歌う少数民族サンチ族 - ảnh 1
サンチ族の文化スポーツ祭り

楽器が要らないこの歌垣は、道で出会った時や、市場へ行った時、畑仕事をする時、結婚の時などでは挨拶の代わりに歌われています。また、会話ではなく、シンカーを歌いオペラのように話し合うこともたくさんあります。シンカーの歌詞は歌い手の生活に関連するもので、これはサンチ族ならではの音楽によるコミュニケーションであると言われています。クアンニン省モンカイ市に住むサンチ族の一人ラム・ホさんは次のように話しました。
(テープ)

「かつて、両親からシンカーを習いました。サンチ族の人はほとんどが歌えます。一生懸命練習したり、よくメモをしたりする人はシンカーが上手です。暗記しましたから、その場で自然に歌うことができます。」

また、サンチ族はたまに、シンカーを歌う会を開きます。シンカーの会は昼間休んで、夜だけ歌います。5日から7日連続、夜通しで歌われます。その会で歌われる歌は700から1000曲までです。歌い手は歌垣がうまいだけでなく、高い集中力も求められます。ちょっと間違っても歌い続けてはいけないからです。また、先に歌われた歌を重なってもいけません。

シンカーの会の一晩は夜7時か8時ごろから翌日の朝までです。歌い手は男性グループと女性グループの2つに分けて歌います。それぞれのグループにはリーダーがいて、そのリーダーは歌が上手で、口もうまいです。また、歌い手は全員、未結婚でありながら、血族関係がないという条件です。シンカーの会は男女の恋愛をつくるためのものだからです。クアンニン省モンカイ市に住むサンチ族の一人ハウ・タイン・ティンさんの話です。
(テープ)

「若者たちは結婚相手を探るため、お祭りへ行ったり、隣の村へ遊びに行ったりしてシンカーを歌います。多くの夫婦の結婚はシンカーから生まれました。」

サンチ族の人々の心に深く入ったこうしたシンカーの歌垣は現在でも、大切にされており、その役割と価値をそのまま保たれています。


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