少数民族ジェチェン族の有名な料理の一つは「カーチュア」で、日本語にすると、「すっぱい魚」になります。この料理は、ジェチェン族の祭りに欠かせないもので、この民族の文化の一部です。
ジェチェン族の伝統料理
毎日の簡単な料理と違って「カーチュア」は祭りの時のメイン料理であるだけでなく、お客さんへのプレゼントにもなりますので、その料理を作るには手間がかかります。カーチュアの主な食材は「ニエン」という魚です。ニエンはコイ科に属する魚で、鯉に似ていますが、体が鯉よりほっそりとしていて、その長さは30センチぐらいです。おいしいカーチュアを作るためには、魚を獲ったらすぐ調理しなければなりません。中部クアンナム省フォクソン県に住むジェチェン族の一人アン・ギンさんは次のように話しています。
(テープ)
「おいしいカーチュアを作るには、大きくて新鮮なニエンを使うのがとても重要です。新鮮じゃないニエンはだめです。そうすれば、おいしいカーチュアになりますよ。」
魚「ニエン」は頭と内臓を取り除いた後、ナイフで背に線を切って調味料をつけます。調味料は塩、唐辛子の粉、トウモロコシの粉などですが、つけ方は秘密です。つけたあと、カメに入れてバナナの葉でふたにします。カメに入れられる魚の重さは1キロから1.5キロぐらいです。甕は囲炉りのそばに15日から~20日間置いた後、出来上がりです。先ほどのアン・ギンさんは次のように話しています。
(テープ)
「大きなお祭りのときやお客さんを招待するときに食べるカーチュアはジェチェン族の特産です。この料理は先祖から伝わる伝統的な料理で、私たちにとって大切なものです。ジェチェン族ならではの料理なんです。」
カーチュアを作るとき、家族全員が一緒にやることから、その料理は、家族のつながりをしっかりさせるものとされています。そして、祭りなどで家族全員でカーチュアを楽しむのは、家族団欒となります。ジェチェン族の一人イ・ブオムさんは次のように話しています。
(テープ)
「ジェチェン族にとってカーチュアは欠かせない料理です。この料理を作るとき、材料を選ぶ段階から調味料をつける段階まで、心と団結心をこめて作らなければなりません。そのためか、カーチュアそのものはコミュニティのつながりをしっかりさせるもので、村人が一緒に困難を乗り越えてよりよい生活を送るような努力のシンポルです。」
こうしたカーチュアを作るコツは秘密で、外の人に教えてはいけません。そして、カーチュアを売ることはなく、大切なお客さんにしかあげません。カーチュアはジェチェン族の文化を物語るものといっても過言ではないでしょう。