ベトナムの少数民族ジェチェン族は独特の習慣がたくさんあることで知られています。その中でも、結婚に関する習慣は最も独特な習慣であるとされています。
ジェチェン族の村を訪れると、庭には同じ長さで切られた薪の束がきちんと並んでいる家が多いことに気づくことでしょう。これは、女性の「婚約の薪」と呼ばれています。ジェチェン族の女性は15歳になると、森に入って「婚約の薪」を拾うようになります。母は娘に、「婚約の薪」の選び方をきちんと教えなければなりません。
結婚の薪
その薪を量も質もよいもの拾えば、その女性は素晴らしい結婚生活が送れると考えられています。「婚約の薪」を見るだけで、その女性を判断することができるのです。婚約の薪は、同じ長さで同じ形で切られ、薪の束もきちんと結ばれるということが求められています。
この薪は将来、嫁ぎ先(夫)の親たちにとって冬の暖房対策として使われるもので、花嫁持参金として大切にされています。これは、ジェチェン族の女性の上品さを示すよい習慣だと評されています。ジェチェン族の人々が大勢住んでいる中部コントゥム省ゴックホイ県ダックズック地区人民委員会のイー・ホン委員長は次のように話しています。
(テープ)
「ジェチェン族の「結婚の薪」という習慣は、いい習慣です。女性は、100あまりの束を用意するため、たくさんの薪を切らなければなりませんが、昔から伝わるいい習慣ですよ。」
女性たちは、結婚する前に、「結婚の薪」を用意するほか、畳と布の作り方を習わなければなりません。女性は、村人が村の集会所で集まるとき、サトウキビやトウモロコシなどを好きな男性にあげます。男性がそのサトウキビやトウモロコシを食べることは、その二人が夫婦になることを意味します。ジェチェン族の習慣では、女性は結婚相手を自由に選び、親たちは娘の選んだ相手を尊重します。
結婚の薪を持って帰っているジェチェン族の女性たち
ジェチェン族の結婚は、結納式と結婚式を含めます。結納式は夜中に秘密に行われ、近い親族しか参加しません。結納式で、媒酌人は神を祀る儀式を行った後、女性は、男性が持ってきた鶏を一人でしめます。
一方、結婚式は昼間に行われます。結婚式でまずやらなければならないことは、花嫁が用意した「結婚の薪」を花婿の家に運ぶことです。その見返りとして、花婿の家族は、豚の足、米、塩、唐辛子、お酒を花嫁の家族に差し出します。結婚式で、花嫁の家族と花婿の家族は歌ったり、踊ったりするなど、歌垣の形で交流会を開きます。
ジェチェン族の結婚式を体験した観光客ダオン・ホアイ・トゥアットさんは、ジェチェン族の結婚式は印象的だったと語り、次のように話しました。
(テープ)
「ジェチェン族の結婚式で村人と一緒に踊りました。それは独特な踊りでした。とても楽しかったです。」
現在、女性が用意しなければならない「結婚の薪」の数はかつてのような100もの束ではなく、10から15個になりました。これは、環境保護の観点から、村の規則になっています。先ほどのコントゥム省ゴックホイ県ダックズック地区人民委員会のイー・ホン委員長は次のように話しています。
(テープ)
「結婚の薪に関する新しい習慣は地方行政当局の決議に盛り込まれました。薪の束の数は10から15個になりました。環境保護のため、この習慣は象徴的になっているのです。」
それでも、こうした「結婚の薪」習慣は依然として続いており、自力で生活が送れるという若者の成長を示すものとしてジェチェン族の人々によって大切にされています。