(VOVWORLD) - 少数民族タイ族の家に欠かせない台所用品の一つに「モヌン」と呼ばれる蒸し器があります。モヌンは単なる調理器具ではなく、その家族の神聖なものでもあります。
タイ族の蒸し器「モヌン」は円筒形ですが、逆三角形のお湯の部分とその上にのせる部分とがあります。その高さは33センチ、底の直径は28センチ、口の直径は29センチです。口の部分には2つのハンドルがついています。ハンドルの下にはトカゲの模様が施されているのが一般的です。銅製のモヌンは水を入れて加熱して蒸気を発生させるもので、おこわや野菜などを調理するために使われますが、おこわを調理するときは、もち米を木材の蒸籠に入れるのに対し、野菜を調理するときは、竹製の蒸籠を使います。
蒸し器「モヌン」 |
こうした蒸し器「モヌン」は親から子供に受け継がれる貴重な家具です。モヌンの中には先祖の魂がいると信じていますから、他の人にモヌンを貸す人はほとんどいません。北西部ディエンビエン省ディエンビエンフー市に住むロ・ヴァン・タンさんは次のように話しました。
(テープ)
「我が家は3世代にわたってこのモヌンを使っています。タイ族は、どうしてもモヌンを持たなければならない。引っ越しするときは、必ず新しい住まいに持っていかなければならないと考えています。モヌンは、普通の鍋として使われることもありますが、おこわを調理するための蒸し器として使われるのがほとんどです。」
蒸し器「モヌン」は貧富を問わず、どんな家族でも持たなければならないので、引っ越しするとき、今まで使っている蒸し器が壊れれば、新しいモヌンを用意しなければなりません。そして、子どもが結婚するとき、親からもらうモヌンは婚礼用品の一つとして欠かせないものです。
ソンラ省クィンニャイ県に住むロ・ヴァン・タイさんは次のように話しました。
(テープ)
「蒸し器「モヌン」は一家の必需品で欠かせないものであり、引っ越しするとき、そして、結婚するときはちゃんと用意しなければなりません。かつては、銅製のモヌンでしたが、今は、アルミニウム製のものもあります。」
蒸し器「モヌン」 |
特に、結婚式で親からもらうモヌンを用意するときは、祈祷師に頼んで、そのモヌンが新夫婦に見合うかどうかをチェックしてもらいます。ソンラ省ソンラ市に住むクアン・ヴァン・ラインさんは次のように話しました。
(テープ)
「タイ族の習慣では、結婚するとき、必ず蒸し器「モヌン」を用意しなければなりません。この蒸し器は、調理器具としてはもちろん、先祖を祀るものとしても使われるからです。調理以外の時は、祭壇のところで保管しなければなりません。」
タイ族の考えでは、先祖は蒸し器「モヌン」を通じて、子孫の生活を見極めたり、困難を乗り越えるように支援したりしています。そのため、今もなお、「モヌン」は、タイ族の生活に欠かせない存在であり続けています。