チャム塔は古代のチャムパ王国の宗教的建築物であり、ヒンドゥー教の建築芸術の特徴を示しています。現在、ベトナムにはおよそ50つのチャム塔が残っており、中部沿海各省に点在しています。建設されてから5~600年を経た塔があるし、千年の歴史を持つ塔もあります。では、今回はチャム塔についてご紹介します。
ヒンドゥー教において、チャム塔はバラモン教の典型的な建築様式の一つの形式であり、塔の先は常にとがっています。それも神秘的なメルーマウントのシンボルで、神々が住みつくところです。
国内外の研究者によりますと、建築様式に関して、ビンディンのチャム塔は華麗に設計され、東南アジアで最大規模となっています。また、カンボジアのアンコールワット遺跡などは石を組み合わせで建てられた一方、チャム塔は煉瓦で組み建てられています。模様は煉瓦に彫刻されていますが、建築様式としては珍しいものです。国家文化遺産評議会議員で、東南アジア研究院のゴ・バン・ゾアイン準教授は次のように語りました。
(テープ)
「煉瓦で組み建てられた建築物であれば、寿命は最長でもおよそ1世紀ですが、チャンパ王国の塔はいずれも7~800年、ひいては千年もの歴史を持っています。建造物にはセメントや漆喰などの接着剤を使った形跡はないようです。塔の煉瓦の壁に模様が美しく刻まれています。こうした建築はチャンパ王国でしか出来ないかもしれません。」
伝統的なチャムの塔は正方形で、多層になっていて、主に2つの部分:四角の本体ブロックと曲線のピラミッドから成ります。塔の各コーナーには両手を上げて塔の屋根を支える神聖な「神の鳥」といわれるガルーダがあります。当時期のチャム民族の宗教的建築の様式は華麗性を現しますが、装飾がうるさくなく、各ブロックが重層的にアーチが収まり、先が撥ね上がり槍の形になり強い印象を作っています。研究者らはおよそ50のチャム塔を研究した結果、チャム塔は地元で製造された煉瓦で建てられた。この煉瓦は現在の煉瓦と違い特性を持つものである」と指摘しています。さきほどのゾアイン準教授は次のように語りました。
(テープ)
「チャム族の煉瓦は私たちの煉瓦と違います。中部で同じように生産されたものですが、チャム族の煉瓦は私たちのものより軽いです。例えば、私たちの煉瓦は2キロですが、チャム族のは1・5キロです。また、チャム族の煉瓦は軟らかく、柔軟です。私たちの煉瓦は硬く、曲げたら壊れてしまいます。」
現在、ベトナムには国内的知名度はもちろん、世界でもよく知られているミーソン遺跡群が残っています。1999年に、同遺跡群はUNESCOにより、世界文化遺産として認定されました。ミーソン遺跡群管理委員会のレ・スアン・ティエン委員は次のように話しました。 (テープ)
「2005年から、ベトナムの科学者たちはイタリアのミラノ大学の協力を得て、塔の修復・補強のため、煉瓦を作り始めました。しかし、新しく製造した煉瓦はかつてチャム族が作った煉瓦と比べて、質は低いです。チャンパの建塔工人の腕は素晴らしいと思います。」
千年以上にわたり、チャム塔は堅固に存在して、大きな文化・芸術の価値を含んでいます。中部の強い日差しや激しい雨はチャム塔の華麗さをいろあせさせることはありません。