チャム族の心の拠り所として楽器と舞踊、歌唱は重要な役割を果たしています。また、伝統的な祭りや民族歌唱、舞踊公演などでチャム族の文化色豊かな楽器は欠かせません。チャム族の楽器は多く、その中にギーナン太鼓やパラヌン太鼓、サラナイ トランペットなどがあります。では、チャム族の祭りで使われる主要な楽器をご紹介します。
パラヌン太鼓
チャム族の祭りをいうならばパラヌン太鼓を抜きにして語ることはできないでしょう。この太鼓は丸型で、表面には革が絡み合った柔らかいひもではられます。パラヌン太鼓は手で打ち、サラナイ トランペットやギーナン太鼓と協奏的に演奏されています。チャム族の考えでは、パラヌン太鼓とサラナイ トランペット、及びギーナン太鼓の3つは人間のことを象徴するとしています。ニントゥアン省、ニンフオック県文化情報センターのクァン・ズン芸人は次のように語りました。
(テープ)
「サラナイ トランペットは唇、パラヌン太鼓はお腹、ギーナン太鼓は2つの膝を象徴するものです。3つの楽器は祭りで演奏されている一方、サラナイ トランペットは葬式でも演奏されます。また、祭りでムントンという名の師だけがパナヌン太鼓の演奏を許されますが、キーナン太鼓とサラナイ トランペットは誰でも演奏できます。」
ギーナン太鼓
ギーナン太鼓は形はベト族のタンバリン(Trong Com)と同じですが、より大きいです。2個のギーナン太鼓による協奏曲は祭りの賑やかな雰囲気をかもし出します。
他方、サラナイ トランペットは3つの部分で構成されます。トランペットのシャンクは銅で作られ、口蓋垂が付けられます。本体とスピーカーは木製です。サラナイ トランペットはパラヌン太鼓とサラナイ トランペット、及びギーナン太鼓の3つによる協奏曲の前奏とされています。
サラナイト・ランペット
この3つの楽器による協奏曲は人の心を奪うほど、美しいですが、その演奏は容易ではありません。さきほどのニントゥアン省、ニンフオック県文化情報センターのクァン・ズン芸人は次のように語りました。
(テープ)
「村の中でパラヌン太鼓とサラナイ トランペットの練習は絶対に許されません。音が村に響かないように、遠い畑で練習するのです。また、村の中で演習するなら鬼を誘ってくると言われています。」
ニントゥアン省とビントゥアン省に住むチャム族の人々の中には伝統楽器の演奏はもちろん、製造もできる人がいます。熟練した芸人でもこの3つの楽器を製造するために約1ヶ月間かかります。ニントゥアン省に住む芸人ティエン・サン・テムさんは伝統楽器の演奏・製造ともできる人です。テムさんは「自分のような芸人はあまりいないことから、若い世代に教える必要がある」と述べ、次のように話しました。
(テープ)
「若者たちに対しできるまで教え続けます。太鼓やトランペットの製造ができる芸人が少なく、また、皆は年を取っていますので、若者に伝えるのです。教わった若者はみんな、楽器の製造ができますよ。」
パラヌン太鼓とサラナイ トランペット、及びギーナン太鼓の3つはチャム族の祭りの独自性を作ってあげます。これらは祭りでしか演奏されないもので、人間と神を結び付ける神聖な楽器と思われています。