ベトナムの他の民族と同じように、ティ族にとって結婚式は人生の重要な通過儀礼の1つであり、一家の一大関心事となっています。そうした意味で、結婚式に関し、様々な厳しい儀式や規定があります。ティ族の風習によりますと、男性の家族は結婚式費用のほぼ全額を負担します。男性側は女性側が求める婚礼用品を十分に用意しなければなりません。
かつて、ティ族の婚姻は両親が決めていましたが、若い男女の選択で行なわれる結婚式もありました。若い男女は長い間、デートをした後、男性は家族に通知します。彼の家族は家族内の信頼できる代表や長老に女性の家族に結婚の申し込みを依頼します。
女性宅に婚礼用品を持っていく
(写真:thienduongvietnam.com)
男性の家族は吉日を選び、家族の代表と仲人に結納品を女性の家族に持って行くよう頼みます。一方、女性の家族は親戚の中から位の高い人を招き、男性の家族と婚礼用品について相談することを頼みます。ランソン省、チャンディン県、カンチエン村に住むティ族出身のチャン・クォク・フインさんによりますと、披露宴はお金がかかります。男性の家族はおよそ400キロの豚肉やもち米で作った丸いお餅バインザイ、鶏肉、お酒、金銭を用意しなければなりません。フインさんの話です。
(テープ)
「結納の席では、およそ20人分の料理を用意しなければなりません。また、経済的に余裕がある家ならばおよそ60人分の料理を提供します。一方、結納品として35キロの豚1匹、お餅60個、鶏2羽、酒瓶2本を持って行きます。両家はご馳走をしながら、婚礼用品について相談します。女性の家族の要求に従って、男性の方は婚礼用品を用意します。」
このように語ったフインさんは「昔、披露宴の全ての料理は豚肉から作ったものなので、男性の家族は女性の家族に100キロの豚肉を提供しなければならなかった」と明らかにしました。
他方、ランソン市、ミアファ村に住むホアン・フオン・アインさんは「婚礼用品を十分に用意することは男性の家族の誠意を評価するための初歩的な基準である」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「女性宅に持って行く豚肉が5~7キロ増えても構いませんが、足りないのはいけません。その場合、約束を守らないと言われますよ。それで、豚肉を女性宅に持って行く前に、きちんと測らなければなりません。」
かつて、婚礼用品は厳しく求められたのに、どんな家族もこの要求に応えられるわけではありません。それで、息子が結婚適齢期に達すると、親戚に豚肉の用意を頼む家庭もありました。さきほどのフインさんは次のように説明します。
(テープ)
「昔は大変でしたよ。豚の餌は野菜しかなかったので、豚はなかなか成長しませんでした。1年かけても、豚は50~60キロやっとでした。こうした事情から豚の飼育を頼む風習が生まれたのです。例えば、翌年、息子の結婚に備え、親戚に豚1匹を飼ってくれるよう頼みます。」
現在、婚礼用品は昔のように厳しく求められないことからティ族の「豚の飼育を頼む」風習はなくなりました。しかし、住民同士の親しい付き合いや助け合いの精神は昔のまま保たれています。