少数民族ヌン族の若者はかつて、結婚相手を親に探してもらいましたが、現代生活の影響で、自分自身で結婚相手を探すようになりました。しかし、結婚に関する習慣や信仰は依然として変わることなく、独特さをそのまま保っています。
ヌン族の結婚式
ヌン族の若者たちは16歳ごろになると、村の祭りや畑仕事を通じて結婚相手を探し始めます。彼らは「スリ」と呼ばれるヌン族ならではの民謡を歌って相手に自分の愛情を伝えます。ヌン族は結婚を大切にしているので、自由に結婚相手を探せるとはいえ、親の同意を得なければなりません。ハノイ市内にあるベトナム民族学博物館の文化研究者ルオン・ヴァン・ティエットさんは次のように語りました。
(テープ)
「若者が結婚相手を見つけたとき、婚約の証として自分が身につけていたものを互いに交わし合います。例えば、男性は女性から帽子やネックレスを、女性は男性からハンカチをもらいます。カップルはその婚約用品を持ち帰って、自分の親に告げます。男性の家族は、その女性について調べます。例えば、その女性の家族はどのような家族であるか、その女性は勤勉なのかどうかを調べます。そして、子どもを産むのは結婚の重要な目的でもあるので、その女性が健康かどうかを調べます。もし、女性の家族が子だくさんなら、その女性も子どもを産みやすい性質と考えるのです。」
男性の家族が女性のことについていろいろと求めるのに対し、女性の家族は男性の家族に、顔合せ、結納の式、結婚式など結婚に関する全ての行事を盛大に行うよう求めてもいいです。それは、女性がいい花嫁として尊重されることを示すのです。
結納の式は顔合せから少なくとも1ヵ月後に行われます。結納式で、結婚式の日取り、花嫁の持参金、婚礼家具などについて話し合います。結婚式は3日間連続で行われます。結婚式で、男性の家族は、花嫁を迎える男性を、女性の家族は花嫁を見送る男性を選びます。この2人の男性は幸せな家族があり、息子と娘の両方がいます。ランソン省に住むヌン族の一人で、結婚式で花嫁を迎える男性としての役割を果たしたことがあるロック・コン・フンさんは次のように話しました。
(テープ)
「ヌン族の習慣では、花嫁を迎えるとき、男性の家族は、焼き豚1匹を用意し、花嫁の家へ持って行きます。そして、花嫁を花婿の家に迎えたとき、おこわと鶏を準備しなければなりません。そして、花嫁を迎える男性と花嫁を見送る男性の2人は結婚式の前日、会って、花嫁の迎え・見送りについて相談します。」
結婚式の日、「花嫁を迎える男性」と、花婿のおばちゃんが引率する花婿の家族は、丸焼きの豚1匹、8羽の雄鶏、おこわなどの婚礼家具を持って花嫁を迎えに行きます。花嫁の家の門に着いたら、「花嫁を迎える男性」と花婿のおばちゃんはヌン族の民謡「スリ」を歌います。花嫁の家族の代表は、外へ出て、花婿の家族が持ってきた婚礼家具が十分かどうかを確認します。十分なら、入ることを許可します。
花嫁の家族は婚礼家具を受け取ったのち、ご先祖に報告する儀式を行います。祈祷師は、花婿と花嫁の名前と生年月日をお守りに書いてピンクのリボンで縛ります。これは、夫婦になったことを意味します。
花嫁の家族は、タンス、ベッド、布団、食器など新夫婦の生活に必要な家具をすべて用意しなければなりません。ランソン省チラン地区に住むヌン族の一人ホアン・チエウさんは次のように話しました。
(テープ)
「かつては、花嫁が花婿の家へ行く時、花嫁の家族が用意したすべてのものを持って行きましたが、現在は、ほとんどのものが前もって花婿の家に運ばれます。花嫁が花婿の家に着くと、花婿の先祖の祭壇の前で線香をあげて結婚を報告します。」
現在、生活様式が変わりつつあっても、ヌン族の結婚は依然としてその独特さを守り続けています。