ヌン族の長寿祝い


ベトナムの少数民族ヌン族は親と祖父母の命日を特に記念する習慣はありませんが、両親と祖父母の長寿祝いは行います。長寿のお祝いは、両親と祖父母への尊敬と関心を示すものであり、ヌン族の親孝行の現れでもあります。

ヌン族の習慣では、親が子どもの誕生日を祝うことはなく、子どもと孫は両親と祖父母の長寿祝いをします。長寿は60歳以上とされますが、60歳になると、毎年長寿祝いをします。このお祝いには、子どもと孫が全員集まって、両親と祖父母への尊敬と親孝行を表わします。

ヌン族の長寿祝い - ảnh 1
長寿祝いに丸焼きの豚肉を運ぶ

ハノイ市内にあるベトナム民族学博物館のグエン・ティ・ガン館長は、長寿祝いは還暦と魂に関するヌン族の考えから生まれたものであると述べ、次のように語りました。
(テープ)

「ヌン族は、60歳になると、人生の第1ステージを終えたと考え、第2の人生を送りたければ、長寿祝いをしなければならないと考えています。60歳になってからは毎年、長寿祝いをしますが、それは、お年寄りが身体的にも精神的にも元気に生きるために、子どもと孫の親孝行を示すのです。」

ヌン族の習慣によりますと、子どもは、順番で親の長寿祝いをします。娘は結婚してどんなに遠いところに嫁いでも、人生で一度も丸焼きの豚肉、お菓子、お酒などを持って帰って親の長寿祝いをしなければなりません。ヌン族は、60歳まで生きられる人は福が大きくて、子どもと孫に幸運を与えられると考えられています。その見返りとして、子どもと孫は全員、集まって長寿祝いをする義務があります。

長寿祝いには、必ず祈祷師とヌン族ならではの音楽「テン」を披露する「テンおばさん」という女性に来てもらわなければなりません。親と祖父母の健康に対する子孫の思いを神様のところに届けるのは、祈祷師の祈願と「テンおばさん」の歌声だけであると考えるのです。長寿祝いに欠かせない供え物は、鶏やおこわ、丸焼きの豚肉、卵、お餅などです。これらの供え物は、親と祖父母への子孫の気持ちを表わせるということです。ランソン省の文化担当者チュオン・ヴァン・ティエンさんは次のように話しています。
(テープ)

「ヌン族の長寿祝いの供え物はそれぞれ、意味があります。例えば、長寿祝いに欠かせないお餅は、親と祖父母の肌をきれいにするための意味があります。一方、卵は、繁殖を示すものであり、陰陽の調和を意味です。また、長寿祝いに欠かせないもう一つは、紙製の人間の形をした人形です。長寿祝い後、その人形を燃やします。それは、長寿祝いを受けた人の魂を守り、その人の健康を維持するという意味があります。」

長寿祝いは、夕方から翌日の夜まで行われるのが一般的です。長寿祝いでは、ヌン族ならではの音楽「テン」が披露されます。人間のルーツ、人間の成長、別世界における人間の生活などを物語る11の曲が歌われるのが長寿祝いの特徴の一つです。

長寿祝い後、親と祖父母はいつも、子どもと孫に供え物をします。これは、親と祖父母の幸運や福を次世代に残したいという気持ちからです。こうした長寿祝いは、ヌン族の生活から切っても切り離せない存在となって続けています。

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