パコ族の結婚の独特な習慣の一つは、男女のデートのやり方です。「シム」（Ｓｉｍ）と呼ばれるこの習慣では、男性はある女性が好きになれば、その女性の高床式の家の床を枝で叩きます。女性が同意すれば、ドアを開け、男性を家の中に入れます。二人は、徹夜で話し合ったり、歌垣の形で民謡を歌って自分の気持ちを表わしたりします。現在、「シム」という習慣は薄れていますが、歌垣が結婚式には欠かせい存在であることは続けています。

男女は結婚相手を自由に探すことができますが、結婚相手を決めたら、双方の両親と神様に報告しなければならないという習慣があります。中部トゥアン・ティエン・フエ省アルオイ県ホンチュン村の村長ホー・ヴァン・ハインさんは、その報告は両親への尊重を示すものであり、両親に結婚用品の準備を助けたいということであると述べ、次のように話しています。

（テープ） 

    「結納の前に、神前で報告する儀式を行わなければなりません。家で神様に報告することは先祖に報告するためでもあります。結納式で、男性の家族は必ず、女性の家族に瑪瑙でできた装飾品を贈らなければ鳴りません。このプレゼントは、婚姻関係を結びたいという意味があり、女性の家族が受け入れれば、両親が女性に結婚させることを意味します。これは、結納式の最も重要な習慣です。」

結婚式では、男性の家族と女性の家族はそれぞれ、婚礼用品を用意しなければなりません。男性の家族は、装飾品、衣服、そして、豚、牛、ヤギなど4本足の家畜を用意するのに対し、女性の家族はカーテンや布類のほか、魚、そして、2本足の家禽を用意します。

パコ族の伝統的な結婚式は、女性の家族の家で花嫁を見送る儀式と、男性の家族の家で花嫁を迎える儀式があります。見送る儀式では、女性の家族は、布や鶏、おこわなどを用意します。花嫁が高床式の家を出て階段に降りると、花嫁の母は、その布を花嫁の頭に覆います。それは、花嫁が不運に遭わないようにするためです。一方、迎える儀式では、花婿の家に着くと、花婿の母は布を花嫁の頭から外し、瑪瑙でできたネックレスを花嫁の首につけてあげます。その後、双方の家族は歌垣の形で歌いながら、結婚式を進めます。

（歌垣の現場のテープ）

歌を通じて、双方の家族は自宅の生活、そして、花嫁と花婿のことを説明しながら、相互理解を深めた上で、密接な婚姻関係を結びたいということを目指します。パコ族の文化研究者ホー・ヴァン・ティエンさんは次のように話しています。

（テープ）

「歌垣は、パコ族の結婚式に欠かせないもののようです。歌の歌詞は簡単ですが、その意味は深いです。双方の家族は歌を通じて、相手への気持ちを示したり、自らの得意をピーアールしたりします。」

結婚式の歌垣は、新夫婦が幸せな生活を送れるようにというためで、パコ族の独特な結婚習慣の一つとなりました。