人生の通過儀礼の中の結婚式はバナ族コミュニティにとって、重要な儀式の1つです。居住地や歴史時期によってバナ族の婚姻儀式が異なりますが、伝統的なスタイルの結婚式はバナ族独特な文化を表すと評されています。
バナ族は主にベトナム中部のビンディン省やフーイエン省、高原地帯のコントゥム省、ザライ省、ダクラク省に集中しています。多くの発展段階を経て、バナ族は離れ離れになり、各地方に散在していますが、伝統的なスタイルの結婚式が維持されています。結婚年齢に達した若い男女は自由に相手を選ぶことができます。結婚相手の選択に際し、女性は機織や刺繍などができる手先の器用な人、男性は健康で、畑仕事や狩猟が上手な人であるという基準が設定されています。村で開催される祭りや行事は若い男女にとって、出会いの機会となります。かつて、バナ族の間で、婚姻を結ぶため、薪を集める風習がありました。若い女性は結婚前に、100束の薪を用意しなければならなりません。そういう理由で、14~15才になった少女は薪を集め始めます。ダクラク省に住むア・トゥムさんは次のように語りました。
(テープ)
「かつて、婿の家族のために、薪を集める風習がありました。女性は薪を用意しなければなりません。薪をたくさん集め、きちんと縛ることができれば、まじめな人だと評価されますよ。」
バナ族の若い男女は結婚するまで、様々な儀式を済ませなければなりません。その中にキン族の婚約式に同じようなカトリエン(腕輪を交わす)という儀式があります。結婚相手を選んだ後、若い男女は双方の家族に知らせます。両家族が結婚に同意すれば、男性の家族は仲人に腕輪を交わす儀式の主催を頼みます。男性の実家で両家族の立会いに、仲人の指導に従って、若い男女は腕輪を交わします。男性は女性にアルミの腕輪、女性は男性に銅の腕輪を渡し、婚約が成立します。
結婚式はバナ語でポコン(Po Koong)と呼ばれ、年末、つまり収穫後に行われます。また、結婚式は満月の日に村のコモンハウスであるロンという集会所で催され、村の祭りとなります。結婚式後、村人は両方の家族で集って、お酒を飲んだり、ご馳走を食べたり、踊ったりして、楽しい一日を過ごします。村人が帰ると、仲人は嫁を婿の実家に連れて行きます。翌日、両家は仲人を実家に招き、お礼を手渡します。中部高原地帯ダクラク省の民族博物館の職員クァン・ゴックさんは次のように明らかにしています。
(テープ)
「結婚式でカンという地酒を飲むなどの風習は昔のままです。ただ、現在、青年向けに音楽演奏が行われます。また、結婚式に参列する人々の服装も大きく変わってきました。」
ライフスタイルが変化している現在でもバナ族の結婚式では林から採ってきた葉と野菜を利用した料理や地酒が欠かせません。また、昔から伝わる婚姻の風習は大切に守られています。