ベトナム最北端のハーザン省に住む少数民族プペオ族を語るなら、この民族の家を抜きにして語ることは出来ません。家の骨格は木造ですが、壁は土で固められるのが特徴です。プペオ族の人々は家族の生活とその親戚の成功はその土地とその家に大いに左右されると考え、家を生活上の最も重要なものとしています。
プペオ族の典型的な家
プペオ族は小さな谷を村の立地としています。その立地は稲作に必要な水が確保されるからです。プペオ族の習慣では、新築するとき、立地選びを占う儀式から始まります。当主は、立地として選びたいところにいくつかの米粒を置いて茶碗で覆い被せ、土の神にアドバイスを求めます。3日後、その米粒がそのままであれば、その土地は立地として選んで良いということです。
プペオ族のお年寄りによりますと、昔、プペオ族は他の少数民族と同様、高床式の家を建てて住む習慣がありましたが、高床式の家を建てるには人間の生活に欠かせない森林の木をたくさん切ることが必要なので、森林の負担を削減する対策として土で壁を固めることにしました。ハーザン省ドンヴァン県に住むプペオ族のルー・パ・サウさんは次のように話しました。
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「まず家の柱を立てます。その後、家の骨格を作ります。続いて、壁を固めます。壁の資材は家の周りの土ですが、黄色の土を選ばなければなりません。黒土の壁は壊れやすいからです。壁が割れないように、壁の中には竹亜科の「サット」という木を入れます。普通の家を建てるには15日かかります。」
土で固められた壁
プペオ族の家は山や丘を背景にして南向きか南東向きです。屋根は瓦葺か藁葺きです。こうした家の構造は、ドンヴァン高原の厳しい気候に対応するためのものです。ハーザン省の少数民族の文化研究グループのルー・サン・ヴァンさんは次のように語りました。
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「プペオ族の家は普段、3部屋があります。かつて、屋根はほとんど、藁葺きでしたが、近年、瓦葺の家が増えています。経済的に余裕がある家族は4部屋の家を建てることもあります。3部屋の家の場合は、真ん中の部屋の右側にある部屋は台所で、家の最も重要な部屋です。台所には2つの竃があって、日の出、つまり、東向きです。その中、一つの竃は料理を作るものですが、もう一つは祭壇です。新しい家に住み始めるとき、この竃で鶏などを供物として儀式をしなければなりません。」
ヴァンさんによりますと、プペオ族の特徴はその壁です。壁は土で固められますが、特別なやり方で、しっかりと建てられます。数百年もの歴史を持つ家が今も、残っています。7人の男性が共同で一軒の家を建てるのが一般的です。その中、4人は土を掘って工事現場に運びます。一人は土をすり潰します。残りの2人は壁を固めます。高さ5.5メートル以下の家はその壁の幅が50センチですが、それ以上高い家は幅60センチの壁にします。ヴァンさんは次のように語りました。
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「壁に使われる土は粘土です。粘土はしっかりしながら、細粒の土だからです。もし、石を少し土に入れて壁を固めると、割れなどがなく、丈夫になります。そのため、数百年の歴史を持っている家もあります。壁をぬるとき、強く固めれれば固めるほど丈夫になります。壁のヒビ原因になる水が壁に入らないように、壁を固めた後、表面を磨いてスベスベにします。」
台所の出入り口
プペオ族の家の正門は中央の部屋が出入口です。また、壁の高いところに、5つの窓がありますので、家は常に、明るくて、風通しが良いです。プペオ族の家の特徴の一つとして、中二階がありますす。中二階は米、お肉、家具など家庭の倉庫としてその家の豊かさを示すと考えられています。また、お客さんが遊びに来れば、中二階に寝てもらいます。
家の建築が終わったら、祈祷師に新築祝いの儀式を頼みます。まず、祈祷師は古い家で先祖に線香をあげ、引越しの許可をお願いします。その後、祭壇とされる新しい家の竃で儀式を行います。続いて、正門で同じ儀式をやります。最後は調理場となる竃で火をつけます。新築の儀式は夜明けで行われますが、日の出の前に済まなければなりません。朝になると、村人が鶏や豚、お酒などを持って新築のお祝いにやってきます。