ベトナム最北端のハーザン省に集中的に居住している少数民族ボーイ族は少ない人口ながら、今なお独特の伝統文化を保っています。それは衣服や建築から結婚や葬儀の習慣まですべてボーイ族ならではのものです。
ボーイ族の家は、日本で「切妻」と言われる、1枚の紙を2つに折ったような屋根があり、藁葺か瓦葺でできています。家のフレームは木造か竹で、5本の柱に支えられています。中央に大きな部屋があり、真ん中に先祖を祀る祭壇を据え、両脇を接客の間として使われます。さらに、左右に1部屋ずつある造りがほとんどです。ボーイ族の文化の研究家グー・コイ・フォンさんは次のように話しました。
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「家を建てる原則としては、高さを問わず、家の長さと幅は奇数でなければならない。家は2階建てが一般的です。1階は家族だけが住むところで、2階は食料を保存する倉庫です。また、祭壇は風通しがいいような構造で、何かで周りを囲ってはいけません。」
中央にある部屋とその祭壇
ボーイ族はかつて、他の民族と結婚してはならないという決まりがありましたが、現在は自由になっています。結婚の儀式は今も、昔からのやり方が保たれており、3つの段階に分けられます。先ほどのフォンさんは次のように語りました。
(テープ)
「まずは顔合わせといういわゆる「道開き」です。男性の家族は、家事が上手で子沢山の女性2人に頼んで、女性の家族への「道開き」をしてもらいます。もし、女性の家族が同意すれば、男性の家族は2人の男性に媒酌人として頼んで、結納品に関する女性の家族の要求を受けます。男性の家族は結納品を用意して、女性の家へ持って行き、女性の生年月日を聞きます。その生年月日に基づいて結婚式の日を決めます。」
結婚式では、花嫁を迎えに行くのは花婿ではなく、少女で、花婿の妹さんが一般的です。ボーイ族の結婚儀式では、媒酌人の役割を大切にしているため、村で威信があり儀式などに詳しい人でなければなりません。また、媒酌人は歌垣も上手です。ボーイ族の文化研究家のフォンさんは次のように話しました。
(テープ)
「結婚式の日、花婿の家族は花嫁の家へ一匹の豚を含む婚礼用品を持っていきます。花嫁の家族は正面玄関の前に椅子を置き、その上にはお酒の入った茶碗を4つ並べます。花嫁の家族は媒酌人たちに歌垣を求めます。花嫁の家族の歌垣に応えない媒酌人が4つの茶碗のお酒を飲み切らない限り、家に入ってはいけません。」
腕の模様
ボーイ族の男性は藍色の服を着用しますが、女性の民族衣装は、襟と袖と胸に派手な刺繍をするという特徴があります。また、女性は首飾りや腕輪などの装飾品をたくさん身に付けます。そして、女性の民族衣装で刺繍された模様の中には必ず銅でできた太鼓の模様が入ります。ボーイ族の一人チュー・ティ・ズンさんは次のように話しました。
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「銅太鼓の模様は一番最初に目立つような刺繍が施されます。スカートの部分にも模様がありますが、それは織り模様です。民族衣装は結婚式や葬儀などでよく着用します。民族衣装をつくるには材料の用意や細かい縫製など色々な過程が必要で、1年ぐらいかかります。 」
ボーイ族の人々は、先祖から受け継いだ伝統文化を大切にし、文化の保存に取り組んでいます。地元の行政当局の支援により、お年寄りたちは若者たちにその文化を教えることに全力を尽くしています。