今もムオン族は綿の木を栽培し、布を織る伝統を維持しています。ムオン族の衣装は全て手染め・手織りのものです。ムオン族の人々は器用な手先で、民族色豊な文化を表す錦を織っています。
旧暦5月、ムオン族は綿を収穫し、乾燥してから糸にします。ムオン族の風習によりますと、若い女性は結婚前に、夫の親戚に贈り物をするため、6枚から12枚の布団布を織り、まじめな性格と手先の器用さを示さなければなりません。それで、ムオン族のどの家庭でも織機が用意されています。13、4歳の少女は誰もが機織をし、明るいです。ムオン族の織機の構造は特別で、複雑な模様づくりが狙いです。白い布ならば、一日、7メートルから10メートルを織ることができますが、模様入りの錦なら2、3メートル程度しか織れません。北部山岳地帯にあるホアビン市、ザンチュ村の住民グエン・ティ・センさんは次のように話しました。
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「布を織ってから、染めます。私たちは林から採った木を染料として使います。赤、黄色、黒などいろいろありますよ。例えば、黒い布をつくる場合、チャム(Cham)という葉を3日間にわたり浸します。その後、葉を搾って、黒い液体をとります。1週間後には染め上がっています。一方で、綺麗な布を織る為には時間と労力がかかりますよ。手織りなので、布の柔らかさや硬さなど、性質が思うように調整できます。ムオン族の錦は丈夫で、色があせることはありません。」
ムオン族の衣装はベトナムの各民族、また、東南アジア諸国国民の衣装と類似点があります。それは植物の色素で染められ、手織りで、職人の器用な手先、勤勉さ、審美観を示すものであるということです。男性の衣装は簡単で、短いシャツと長いパンツ、腰帯、頭巾がセットになります。短いシャツはコットンや絹からつくられ、両脇にスリットが入り、前身頃はボタンでとめます。また、長いパンツはワイドチューブで、腰帯の幅は広く、布の紐で縛ります。一方で、女性の衣装のセットの中で、特徴的なものは頭巾です。頭巾は白く、幅が約1インチです。また、女性のブラウスも独特で、カラフルです。ムオン族の文化研究者ブイ・フイ・ボンさんは次のように語りました。
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「ムオン族の女性の衣装は頭巾、ブラウス、スカートで1セットです。ブラウスとスカートはタイ族のと似ていますが、頭巾は独特なものです。昔、統治階級の女性の頭巾は髪をたばねた髷の上で縛られていましたが、庶民の場合は髷の下で縛ります。」
ムオン族の女性のブラウスは前身頃の真ん中にスリットが入り、身頃の長さはウェストまで、色は様々です。スカートは黒で、錦の模様がついています。スカートの腰帯には刺繍が入っていて、女性の優雅な姿を強調します。腰帯はシルクの糸で織られ、竜や鹿、チェック柄などの模様が入られます。さきほどのムオン族の文化研究者ブイ・フイ・ボンさんは次のように明らかにしています。
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「腰帯には独特な模様があります。これはドンソン(Dong Son)銅鼓の模様そのものです。長い歳月経ってもこれらの模様が受け継がれています。腰帯の模様は様々ですが、昔、支配階級は竜や他の神聖な動物を模様に取り入れることを禁じました。」
ムオン族の機織技術や模様は母から娘に伝えられるという形で保たれています。ムオン族の衣装の模様は多様で、個人のキャラクターを示した上で民族色も表すものとされています。