ムオン族の言語の保存

(VOVWORLD) - 言語はそれぞれの民族のアイデンティティに欠かせない要素です。そのため、ベトナム北部ホアビン省に居住している少数民族ムオン族は、昔から伝わる祈祷や叙事詩、民謡をコミュニティに広げ、自らの言語の保存に力を入れています。

ムオン族はベトナムに居住する少数民族の中で、およそ100万人で3番目に多い人口を抱えています。ムオン族は山岳部で固有の文化を発展させたといわれ、およそ1万年前に生まれたホアビン文化にルーツを持つとされています。

ムオン族の言語の保存 - ảnh 1儀式で祈祷モを唱えている祈祷師

こうしたムオン族は独特で豊かな文化を誇っていますが、その中で、口頭で伝承してきた祈祷や叙事詩、民謡などはムオン族の文化を支えるとともに、ムオン族の言語の保存にも役立つとされています。中でも、「モ(Mo)」と呼ばれる祈祷は最も独特なものです。

ムオン族の祈祷モは元々,在地の宗教的職能者である男性の祈禱師たちが,師匠から弟子へと伝承してきました。祈祷モはムオン族の人々の生涯に密接につながります。赤ちゃんが生まれた後、祈祷師に頼んで健康と成長を祈るための祈祷モを唱えてもらいます。また、病気にかかった時、祈祷師に、不運や悪魔を祓うためのモを唱えてもらいます。そして、年を取った時、祈祷師に、健在と長寿を祈るためのモを唱えてもらいます。さらに、葬式では、祈祷師は死んだ人の魂が無事に別世界に行けるようなモを唱えます。結婚式や新築祝いの式などでも祈祷師は欠かせない存在です。ホアビン省タンラク県に住む祈祷師ディン・コン・ティエンさんは次のように話しました。

(テープ)

「祈祷のモを勉強し始めたのは私が共同生産組合の組長を務めた1971年か1972年のことでした。当時、高齢の祈祷師から口承で受け継ぎましたが、覚えやすくするため、ノートに書き込みました。祈祷師らが行った祈祷を直接聞いたので、早く身につきました。祈祷モはムオン族の重要な文化遺産です。」

こうした祈祷モには、人間の生活のすべての面に関わる数万の文章があり、ムオン族の生活を物語る百科事典に例えられています。ベトナム政府は祈祷のモを国の無形文化遺産として認めたほか、ユネスコ国連教育科学文化機関に「世界の無形文化遺産」として認定するよう提案しています。実際、モの収集・研究は数十年前から国の支援により、精力的に進められてきました。また、ベテラン祈祷師に頼んで、若者に祈祷のモを教えるクラスがたまに開かれています。これにより、祈祷モは徐々に生活の中で復活し、ムオン族の文化と言語の保存に大きく貢献しています。

ムオン族の言語の保存 - ảnh 2ムオン族の踊り

祈祷モとともに、民謡もムオン族の言語の保存に大きく役立っています。その中で、「ハッドゥム」(Hat Dum)という民謡はこの民族ならではの文化を支えるものの一つとされています。「ハッ」はムオン族の言葉で歌うという意味があり、「ドゥム」は「集まる」という意味です。ハッドゥムは、その名通り、村人が集まって歌うという意味で、結婚式や、新築祝い、村のお祭りなどでよく歌われています。

(現場のテープ)

「ハッドゥム」は歌垣の形で歌われます、歌の内容は、男女の恋愛をはじめ、挨拶のしかたや、収穫、風俗習慣、ふるさとへの思いなど様々です。その中で、男女の恋や愛を内容とする歌は最も多いです。ハッドゥムのもう一つの特徴は、歌い手がその歌のメロディーと合わせて自分の好きな言葉を使って歌うということです。そのため、ハッドゥムは歌い手の知識や気持ちを表すものであるとされています。ホアビン省タンラク県に住むハッドゥムのベテラン歌い手ブイ・ヴァン・イエウさんは次のように話しました。

(テープ)

「ハッドゥムはムオン族の人々の心に密着しています。日常生活においても結婚式や葬式においても、皆は夢中に歌います。そのため、ハッドゥムを歌う人がなくなる日がやってくることを思うと我慢できないので、この民謡を学びたい人に教える用意がありますよ。」

実際、近年、ムオン族の居住地では、多くの民謡クラブが設立され、民謡の交流会や披露会などが頻繁に行われています。また、子どもを対象とした民謡クラスも開かれています。こうした取り組みにより、ムオン族の民謡の保存と発展が促されており、これはこの民族の言語の保存にも大きな弾みをつけることでしょう。

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