ムオン族はベトナムに居住する少数民族の中で、およそ100万人で3番目に多い人口を抱えています。ムオン族は北部山岳地帯、特にホアビン省とタインホア省に多く住んでいます。民族・言語的には多数民族キン族と最も近いとされ、ムオン語はベトナム語とともにベト・ムオン語群としてまとめられます。ムオン族は山岳部で固有の文化を発展させたといわれ、タイ族との相互影響も大きく、また、およそ1万年前に生まれたホアビン文化につながっています。
ムオン族は稲作に従事しており、水稲が主要な穀物となっています。彼らの居住地は道路端に近く、生産用地は多くあります。ムオン族の高床式の住居の後ろは山の斜面であり、正面は広々とした畑に面しています。ムオン族の住居は風通しが良く、利便性が高いです。こうした高床式の住宅は山岳部の蒸し暑い気候に適しており、居住や財産の保管、猛獣から身を守る目的以外に、文化を守り抜く所でもあるとされています。
ムオン族の伝統的民族衣装は独特で、彼らの審美眼を示しています。男性は前身頃にボタンで留めたスリットのあるシャツとワイドチューブのパンツを着用し、腰ベルトで縛ります。また、正月や祝日などに男性は紫か黄色いのシルクのシャツ、黒いコートを着用し、パープルの頭巾を巻きます。ホアビン省、ラクソン県、ニャンギア村の住民クァック・バン・スオンさんは次のように語りました。
(テープ)
「父親の言い伝えを幼い頃から聞いたり、民族衣装をまとうことで、民族文化への理解を深めてきました。ですから、正月や祭り、祝日だけでなく、日常生活でもよく着用しています。これからも、ムオン族の文化色が各世代に受け継がれていくよう希望します。」
一方、女性の衣装のセットは身頃が短く、茶色か白いシャツ、白いブラウス、黒いスカート、白色あるいは青い頭巾となります。女性の衣装の特徴はスカートのウエストベルトや腰帯の模様です。ウエストベルトを織るためには工夫と器用さが求められ、織工の才能は模様のデザインや飾り付けに表れます。同じくホアビン省、ラクソン県、ニャンギア村に住むクァック・ティ・ランさんは「ムオン族の衣装についた模様はおよそ40種類あるが、人気があるのは竜の模様である」と明らかにし、次のように話しました。
(テープ)
「竜の模様をつくるに際し、工夫を施さなければなりません。竜の曲り具合や顎ひげづくりも器用さが求められます。また、飛竜の模様をつくるため、白、黒、赤の糸をうまく絡み合わせる必要があります。」
ところで、ムオン族の独特な楽器としては銅のゴングや二胡、ラッパなどがあります。また、ムオン族の民間文学も豊かで、長詩から昔話、民謡、諺、子守唄などにわたり、その中でムオン族ならではの文化を表すのは民謡です。ホアビン省、キムボイ県、キムビン村の「ムオン族の民族文化保存クラブ」の会員ブイ・ティ・スアンさんは「ムオン族の民謡は様々な種類があり、歌詞はキン族特有の六八体調の詩に似ている」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「当クラブは古い民謡の収集に取り組んでおり、子孫に教えたいと思います。結婚式に若い男女たちは民謡をよく歌っています。また、かつて、私たちは労働・生産にあたりながら、歌っていました。一日かかっても、最後まで歌い切れない民謡もありますよ。歌詞とメロディーが豊かですからね。」
こうした独特な文化を誇っているムオン族は現在、故郷の建設や文化的かつ幸福な生活づくりを進める傍ら、民族文化の保存に力を尽くしています。