ベトナム西北部の山岳地帯に住む少数民族モン族は白モン、青モン、黒モン、花モンの4つのグループに分けられていますが、どのグループも女性の華やかな民族衣装を誇りにしています。モン族の民族衣装は、モン族の文化だけでなく、歴史や人生観も物語るものです。

民族衣装を着ているモン族の女性

モン族の女性の衣装は色とりどりです。民族衣装のセットはスカート、ブラウス、腰帯、頭巾、そして脚を包むレッグラップからなっています。スカートはバレエの衣装のチュチュと似ていますが、横にぴんと張った形です。ブラウスは襟の中央から前身頃の左側にスリットが入り、ボタンで留めます。また、襟と袖、裾に模様がついています。

布の素材は、地元で栽培される亜麻の靱皮から採った繊維です。亜麻はアマ科の一年草ですが、高さが約1メートルほどあり、葉は小さく、線形で互生する植物です。夏、青紫色または白色の5弁花を開き、果実は丸く、中に長楕円形で平たい黄褐色の種子がありますが、種子から亜麻仁油を絞り、茎から繊維をとります。モン族は、亜麻から作られた糸は、死んだ人の魂と先祖とを結ぶ懸け橋だと考えていますので、民族衣装は伝統的な儀式にとって欠かせないものです。モン族の文化の研究者ヴァン・ア・スアさんは次のように話しました。

（テープ）

「モン族は、伝統文化を守る意識が高い民族で、今もなお、様々な伝統的な行事を保っています。また、多くの伝統職業も維持していますが、中でも、亜麻による布作りと錦織があります。」

モン族の女性の美しさ

ベトナムのどこに住んでいてもモン族の女性は刺繍が上手です。刺繍の模様が多様で、クロスから三角型、サークル、スパイラル、S字型にわたって、模様のレイアウトも調和しています。モン族の考えでは、これらの模様は太陽、気候、空間、時間を象徴するものであるとしています。また、スカートの色は主に赤、緑、黄色です。

モン族の女性の衣服は単に身に付けるだけでなく、審美的需要に応えるものでもあります。昔から、キレイに飾り付けたスカートはモン族の女性の器用さの目安とされてきました。モン族の習慣では、モン族の女性は、結婚前に、自分で結婚衣装を作るために、裁縫が上手でなければなりません。ですから、彼女たちは、祖母や母親から、手織りや、刺繍、縫い方などを教わります。ハザン省クアンバ県に住む23歳のスン・ティ・マイさんは次のように話しました。

（テープ）

「私は12歳で縫い方などを習い始めましたが、18歳までも、糸をつむいだり、結んだりするなど簡単なことしかできませんでした。モン族の女性にとって民族衣装を自分でつくることはとても重要なことです。」

モン族の女性は家族の衣服づくりの担い手です。生活は現代化されつつありますが、モン族は依然としての独自の民族衣装を着用しています。