ベトナムの５４民族の中で、コム族（Kho Mu）はそれほど人口が多い民族ではありませんが、伝統的な文化をきちんと守っている民族として知られています。

サカウ（Xa Cau）、ムンセン（Mun Xen）、プテン（Pu Thenh）とも呼ばれているコム族はもともとラオス北部に集中的に居住していましたが、１００年ほど前に、ベトナムに移住してきました。2009年の国勢調査によりますと、コム族の人口は7万3千人です。その大半は、ラオスと国境を接しているベトナム中部ゲアン省の西方にある山岳地帯ですが、北部のソンラ省やライチャウ省にも住んでいます。

コム族はよく動植物の名を自らの苗字に使用しています。そして、動植物を自らの先祖にする一族もあります。その一族はその動植物を決して食べません。

コム族は山の中間に家を建ており、それぞれの村は数十軒の家があります。コム族は家の建築を大切にしており、新築祝いの式はその家族だけでなく、村全体の行事でもあります。その式で、コム族ならではの文芸が披露されます。

コム族の家は高床式の家ですが、面積が狭く、簡単に建てられます。コム族の家の特徴は、囲炉りにはつねに火がついていることです。これはコム族独特な文化の一つでもあります。ベトナム民族学博物館の研究者ヴィ・ヴァン・アン博士は次のように話しています。

（テープ）

「コム族の最も注目すべきの信仰の一つは家の囲炉りに関するものです。この信仰では、囲炉りの火を消してはいけません。その火はその家族の豊かさを示すものであり、先祖へのつながりでもあります。その火をいつもつけておくのは先祖とのつながりを切らないためのものです。」

コム族は、とうもろこし、タピオカ、ジャガイモの栽培を本業としていますが、あまり手入れをせず、そのまま自然的に育てます。コム族は、豚や鶏も飼っていますが、それは行事やお客さん接待のために使われます。コム族は、竹や藤を使ってカゴなどを編みます。コム族は布を作らないので、よくタイ族の服を買っています。

コム族は結婚を人生の最も重要な出来事とみなしています。コム族の結婚の特徴は、親たちが結婚相手探しに関する子供の決定を尊重することと、結婚生活の男女平等が守られることです。そのため、喧嘩が少なく、幸せに暮らす家族が多いです。コム族は、結婚してからの１年間、男性が妻の実家に住む習慣があります。その１年間、男性は自分の苗字を妻の苗字に変えます。また、子どもが生まれた時、子どもも母親の苗字を使います。しかし、その１年後、男性の実家に戻った時、男性はもちろん、その妻と子どもも元々の男性の苗字を使わなければなりません。

毎年、コム族は、正月祝いの儀式や新築祝いの儀式などいろいろな行事を行います。これらの儀式を通じて、コム族の信仰がよくわかるでしょう。コム族の文化研究者ブイ・ミン・テさんは次のように話しています。

（テープ）

「経済的に余裕のある家族はどうしても一年に２つの儀式を行わなければなりません。まずは旧正月の儀式です。この儀式では、家族全員が集まって先祖にお肉やお酒を供えて、その一年がうまくいったことについて先祖に感謝します。二つ目は、旧暦の６月に収穫が終わった時に行われるものです。」

コム族は民謡がたくさんありますが、その中で、トムと呼ばれる民謡が最も人気があります。この民謡は、叙事詩的なもので、愛情に満ちています。コム族の楽器はほとんど、自然の素材で作られますが、その中でも、竹でできた楽器が一番多いです。

コム族は、お客さんに温かいもてなしをすることで有名です。コム族の村を一度訪れると、忘れらない記念になることでしょう。