ベトナム北部山岳地帯で暮らしている少数民族ザイ族のお餅は、お正月、葬式、結婚式などの行事の時に欠かせないものです。ザイ族の人々の考えでは、お正月にあたり先祖にお供え物として捧げられるお餅は先祖にその一年の生活を報告するとともに、健康、幸運、豊作などを祈るためのものです。先祖に捧げられるお餅はお供え物であり、清潔にきちんと作られなければなりません。
ザイ族のお餅(写真:インターネット)
お正月によく食べられるザイ族の代表的なお餅は3種類ありますが、その中で、「グー」というのが一番大切なお餅です。「グー」は長さが20センチぐらいの棒形ですが、中央部分は両側の端より大きい。原料はもち米、緑豆、豚肉のスライス、塩、ショウガ科の多年草であるカルダモン(和名:
小荳蒄)の種、および、「ゾン」というクズウコン科の緑の葉っぱです。
もち米は棚田で生産されたもので、豚肉は脂肪と赤身との調和がとれたもの、塩と焼いたカルダモンの種に漬けられます。作り方はもち米の中に緑豆の餡と中に豚肉が入っています。これを「ゾン」の葉っぱで巻いて、10時間ぐらいふかします。グーを綺麗な形にするには手際の良さが求められます。
北部ラオカイ省バットサット県コックサン村ルオンド集落に住むホアン・ティ・ビックさんは次のように話しました。
(テープ)
「グーの中央部分は大きいながらも釣り合いがとれているほど綺麗です。グーを見ると、そのお餅を作った女性は手際がいいかどうかわかります。綺麗なグーは先祖へのお供え物として使われます。一度祭壇に供えられるグーの数は7個で、2日経たないと下げてはいけません。」
ザイ族の宴会などで欠かせないものは「ボン」というお餅です。特にお正月よく食べられるこの「ボン」はお正月の料理の一つとされています。ラオカイ省バットサット県に住むホアン・ア・マウさんは、美味しくてきれいな「ボン」のお餅を作るためにはお米の質が大事であると述べ、次のように話しました。
(テープ)
「お米を使っておこわにした後、おこわの粒がくっ付き合わないようにすぐにもち米の粉を入れて混ぜます。その後、おこわの粒が平たくなるまで軽く押します。続いて、カビが出ないように、乾燥させます。宴会などが近づくと、炒ってからサトウキビからできた砂糖と生姜ジュースを混ぜます。」
こうした「ボン」のお餅はもち米と生姜の香り、サトウキビの甘味などが混じりあい独特の美味しさです。
ザイ族のもう一つのお正月のお餅として「カオ」が挙げられます。「カオ」は旧暦のお正月前に作られ、お正月の料理はもちろん、お正月の贈り物としても使われます。「カオ」の作り方は、最初の段階は「ボン」のお餅と大体同じですが、炒ったあと砕いて粉にします。その後、土の中に約2、3日埋めます。
ラオカイ省コックサン県ルオンラオ村に住むヴィ・ティ・タインさんは次のように話しました。
(テープ)
「その粉にサトウキビからつくった砂糖を混ぜます。砂糖も粉のように砕かれます。ボトルや棒を使ってその粉と砂糖を練り合わせます。その後、型に入れて形をつけます。」
ザイ族のお餅の原材料はすべて、必ず自分で作ったものでなればなりません。それは先祖への尊敬を示すものです。そして、作り方は先祖代々昔々から伝えられてきましたが、これからも、ザイ族独自の文化の一つとして守られてゆくことでしょう。