ベトナム東北部に集中的に居住している少数民族サンチ族は、豊かな民芸を持つことで知られていますが、その中でも、民謡は、この民族の精神生活にとって重要な役割を果たしています。生活が現代化される中にあっても、サンチ族の民謡は今もなお保たれており、日常生活の中でよく歌われています。
民芸研究家によりますと、サンチ族の民謡は長い歴史があり、その起源はいつなのかはわかりませんが、代々伝えられてきた価値の高い無形文化としています。この民謡は男女による歌垣の形で、男女の逢瀬、結婚式、長寿のお祝いの席などでよく歌われています。バクザン省ルックガン県キエンラオ村に住むサンチ族の一人チャン・ヴァン・トゥイさんは次のように話しました。
(テープ)
「サンチ族の民謡は、結婚、愛情、長寿の祝いなどを主な内容としています。メロディーは3、4つほどあります。その種類は昼間の歌、夜の歌、結婚の歌などです。サンチ族の民謡はお祝いの性格が多いですね。たとえば、結婚式では、花嫁を迎えることを祝う歌が歌われます。」
祭りで歌われるサンチ族の民謡
民芸研究家の統計によりますと、現在、サンチ族は昼間歌う歌500曲、夜歌う歌1000曲、結婚の歌100曲を歌っています。民謡を歌う人は若者だけでなく、中年やお年寄りもいます。民謡を通じて自分の心の動き、気持ち、愛情、希望などを表すことができるのです。
2012年、サンチ族の民謡は、国の無形文化遺産に認定されました。認定以来、この民謡の保存・開発は更なる重要な課題となっています。キエンラオ村祖国戦線担当者リー・ホン・ヴィエンさんは次のように語りました。
(テープ)
「サンチ族の民謡は国の無形文化遺産として認定されましたので、さらにこの民謡を守ってゆかなければなりません。祖国戦線は、民謡クラブの活動を支援したり、民謡教室を開いたりするなど、誰もが民謡を歌えるようにしています。30歳以上の人は誰もが歌えるという目標を出しています。私たちは、民謡が得意な人に頼んで、子ども向けの教室も開いています。参加する子どもはまだ多くないですが、これから増えてゆくと思います。」
先ほどのチャン・ヴァン・トゥイさんはサンチ族の民謡が上手に歌える人であり、その民謡の保存に大きく貢献している人としても知られています。民謡を教える無料教室を開いたり、いろいろな地方を回って民謡を公演・紹介したりしています。トゥイさんは次のように語っています。
(テープ)
「いろいろなところに私は出かけてほかの民族の民謡をよく聞いています。とても上手です。サンチ民族の民謡のことをよく考える私は、さらに進めなければ、代々伝えられた自慢の民謡が消えてしまう恐れがあります。ですから、できるだけ子どもたちに民謡を教える決意です。2014年、私の家で、7、8人の子どもに教えました。2015年も夏休みの時、教室を開きました。」
トゥイさんによりますと、サンチ族の民謡を習うのは簡単ではありません。サンチ族の民謡は昔の言葉をたくさん使用しているのです。ですから、教えるとき、言葉の意味を説明しなければなりません。しかし、トゥイさんは、「サンチ族がある限り、民謡が消えない」と決意を固めています。