少数民族ヌン族の人口は100万人以上を占めており、ベトナムの54民族の中で、人口が多い民族の7位となっています。ヌン族は全国各地に居住してますが、ランソン、カオバン、バッカン省など北部の山岳地帯に集中的に居住しています。この民族は伝統文化を大切にしており、今もなお昔のままの習慣を保っています。
ヌン族の女性
ヌン族は各地方に居住していますので、「ヌン・スオン」、「ヌン・ザン」、「ヌン・アン」、「ヌン・ロイ」など約10のグループに分けられます。ヌン族は村を社会の単位にして、それぞれの村には30から70の世帯が住んでいます。普段、村の前は水田で、後ろは果物の農園などです。
ヌン族の家は高床式の家と壁が土で固められる家の2種類があります。家は広くて瓦葺で、木材の板で2つの部分に分けられます。後ろの部分は台所と女性が住むところです。前の部分は祭壇を置くところと男性が住むところです。
ヌン族の衣服はほかの少数民族と違って目立つことなく、藍色で刺繍などもあまりありません。女性の衣服はたまに、袖の裾や襟などに少し色のついた布や刺繍がつけられますが、地味でシンプルです。
ヌン族の主な生計は稲作です。また、畜産で有名な民族の一つでもあります。ベトナム民族文化村のガイドグエン・ヴァン・テーさんは次のように語りました。
(テープ)
「ヌン族の人々は、棚田と水田の両方の開墾が上手です。米を主な食料にしていますが、トウモロコシ、タピオカ、シナモンなど経済価値の高い樹木もよく植えています。また、畜産も上手です。彼らはムオン・クオンという豚やカオバンという馬など経済価値の高い家畜を作ることができたんです。」
農業の傍ら、生活の家具などを作るためにいろいろな職業もやっています。女性の場合は、綿花の栽培、機織での織物、籐細工であるのに対し、男性はほとんど、鍛錬、鋳造、木工などが上手です。勤勉さはこの民族の特徴と言っても過言ではありません。
そして、誰もが先祖を大切にしているヌン族は、どうしても「清明節」の期間に、先祖のお墓参りをしなければなりません。ランソン省に住むヌン族のノン・ヴァン・ドアンさんは次のように話しました。
(テープ)
「中国から来たヌン族は、春に「清明節」という習慣を持ってきました。この期間に、家族は男女を問わず全員、お線香やお花、料理などをお供えし供養しなければなりません。」
ヌン族は歌垣や民謡を始め豊かな民間文芸を誇りにしています。市場は物を売り買いするところだけでなく、歌垣や民謡を披露する集いの場所でもあるので、「市場へ行く」というのはほとんどのヌン族にとって趣味になっています。
ヌン族は祭りでもよく知られています。その中で、最も大きな祭りは豊作を祈るロントンと呼ばれるものです。旧暦の1月に行われるこの祭りは、農業に対するヌン民族の考えを示すもので、祭りを通じてこの民族の信仰や価値観をみることができるでしょう。