ベトナムの53の少数民族の一つであるホレ族はベトナム中部高原地帯テイグエン地方に集中的に居住しています。この民族は独特で豊かな文化を誇りに思っています。
布を織っているホレ族の女性たち
ホレ族は、「チャムレ」(Cham Re)、「チョム」(Chom)、「クレ」(Kre)などとも呼ばれています。ホレ族の言語はモン・クメール語派に属し、バナ族やセダン族の言語に似ています。現在、ホレ族の人口は約13万人で、テイグエン地方のダクラクとコントゥムの2省のほか、中南部のビンディン省とクアンガイ省にも居住しています。
ホレ族は「プレー」と呼ばれる村を社会の単位にして、それぞれの村には40、50の世帯が住んでいます。そして、村はその周辺の山や川の名前に基づいて名付けられます。村の立地は、水源と農作業ができる土地に近いです。ホレ族の村では、村長の威信が高く、村の生活に重要な役割を果たしています。
かつて、ホレ族の人々はすべて、「ディン」という名字を持っていましたが、近年、ベトナム人口の9割を占めるキン族の名字に変える人が増えています。特に、中部クアンガイ省に住むホレ族の人々は、クアンガイ出身のファム・ヴァン・ドン元首相に敬意を表わし、名字を「ファム」に変えてきました。
ホレ族は稲作を本業としていますが、この民族の稲作の技術は高いと評されています。また、家畜や家禽の飼育もやっていますが、これらは儀式の供え物として使われるのが一般的です。ホレ族は織物や鍛冶業、籐細工などを副業としています。
かつて、ホレ族の男性は腰巻とえりなし・そでなしのシャツを、女性は、ロングスカートを履きましたが、これらは伝統的な布でできています。現在、ホレ族の人々は普段着に洋服を着ていますが、伝統衣装はお祭りや儀式でよく使われています。
ホレ族は一年中、多くの行事や祭りを行っていますが、その中で一番重要な行事は新年に当たり、水牛を祀る儀式です。稲作を本業とするホレ族にとって、水牛は最も大きな財産であり、一家の主要な働き手でもあります。そのため、この水牛の儀式は、よい天候を恵んでくれた神様に感謝の気持ちを表わすと共に、これからも家族全員が健康で平穏な暮らしを送れるようお祈りをするためです。ホレ族の一人ディン・ブロイさんは次のように話しています。
(テープ)
「昔から、ホレ族は、どんなものにも神が宿っていると考えています。ホレ族は、前年の不運を消し去り、新年に幸運を迎え入れるために水牛を祀る儀式を行うようになりました。」
ホレ族の家は高床式の家で、土から床までの高さは約1メートルです。その屋根は藁葺きで、その上には、水牛の角を飾るのが一般的です。ホレ族の高床式の家は5部屋あり、その中央の部屋は囲炉りが設置される最も重要な部屋です。
また、ホレ族は歌を歌うのが好きで、豊かな民謡を誇っています。また、楽器もいろいろあります。楽器を奏でながら、民謡を歌うのはホレ族の村でよく見かけられる風景です。楽器の中でも一番重要なのは銅鑼ですが、銅鑼は行事や祭りでよく使われています。
現代生活の影響で、ホレ族の生活は変化していますが、ホレ族ならではの文化は今もなお保たれています。