ベトナムに住む54の民族の中で、ボーイという少数民族は最も人口が少ない民族の一つです。現在、ボーイ族の人口は約3千人で、ベトナム北部山岳地帯に居住しています。中でも、最北端のハーザン省に集中していますが。ボーイ族は人口が少ないものの、豊かな伝統的文化を保っていることで知られています。
ボーイ族は、プーイ(Pu Y)、チュンチャ(Chung Cha)、チョンザ (Trong Gia)などとも呼ばれています。この民族は農業と畜産を本業としていますが、木工や鍛造、陶器などの副業もしています。また、女性は昔から、綿の木を植えて布を織り、服を作る技術を母親から学びます。
ボーイ族の女性たち(写真:dantocviet.vn)
ボーイ族は父系社会で、家族の大事な課題はすべて、男性が決めます。また、一家族は3、4世代が一緒に住むのが一般的です。ボーイ族にとってこれは、家族の団結とつながりを示していると考えています。ボーイ族の文化や習慣などを研究しているグー・コイ・フォンさんは次のように語りました。(テープ)
「ボーイ族の名字の数はおよそ10ほどです。この民族の生活様式は昔ながらのままで、お正月や葬儀、結婚式は今も昔もあまり変わりません。また、伝統的な民謡も守られています。」
ボーイ族の人々の名前はふだん、3つの文字からなっています。その順番は、最初が名字、次にミドルネーム、最後は名前という順で並んでいます。それぞれの家系は5つから9つのミドルネームを持っています。その家系のそれぞれの世代は同じミドルネームを持っているため、ミドルネームを見るだけで、家系におけるその人の地位がすぐわかります。また、兄弟たちは名前以外の名字とミドルネームが一緒です。
ボーイ族は人口は少ないですが、独特の文化を今も保っています。例えば、結婚式では、花嫁を迎えに行くのは花婿ではなく、花婿の妹さんです。家族では、息子は父親の髪を切ってあげてはいけません。娘は両親に髪梳きをしてあげてはいけません。また、両親が亡くなったのち3年以内、息子は禁酒し、娘は装飾品を身につけてはいけないという習慣があります。
毎年、ボーイ族の人々は、お正月や新米祈願祭りなど、様々な行事を催します。行事で、おこわやお餅などをお供えとして先祖や神様に奉納し、健康や豊作を祈ります。行事では、よく民謡が歌われています。先ほどのフォンさんは次のように話しました。
(テープ)
「民謡は、挨拶、お祈り、お見舞い、愛の歌垣などに使われます。例えば、挨拶として、「どちらから来たのか。どこの遥かなところから来たのか。どこの畑から来たのか。」というような歌があります。その他、たくさんの民謡をよく歌っています。」
ボーイ族の男性は藍色の服を着用しますが、女性の民族衣装は、襟と袖と胸が派手に刺繍されるという特徴があります。現在、この民族衣裳は行事や結婚式などでよく着用されます。ボーイ族が多数住んでいるハーザン省クアンバ県のルク・スオン・ミン民族課課長は次のように語っています。
(テープ)
「ボーイ族の生活は地元の経済社会の発展と共に変貌していますが、昔から伝わる葬儀や結婚、祭りの習慣など独特の文化を今も保っています。ボーイ族は人口が少ないですから、この民族の文化を保存・発展させるのは私たちの優先課題です。」
ミン課長によりますと、現在、ハーザン省はボーイ族の民謡の研究プロジェクトを展開していると共に、お年寄りに頼んで若者に民謡を教える教室を開いています。また、その民族の服装や言葉などを日常生活で使うことを奨励しており、ボーイ族の文化の保存に力を尽くしています。