ベトナムは世界の多くの国・地域とのFTA=自由貿易協定の締結を進めています。その中で、TPP=環太平洋経済連携協定や、EU=欧州連合とのFTA=自由貿易協定などがあります。これらの協定の締結はベトナムが輸入への依存度や、ある市場への依存によるリスを削減し、輸出市場を拡大させることに寄与するものと評されています。
TPPは20の交渉ラウンドを経て、今年末に完了する見通しです。TPP加盟諸国は輸入税100%を撤廃することを公約しています。TPP加盟諸国が全世界のGDP=国内総生産の40%と輸出総額30%を占めていることを見ると、ベトナムがこの協定の締結により、アメリカや、日本、メキシコ、カナダなの大規模な市場にさらに進出し、輸出を強化できるようになるといえます。中でも、繊維製品は大きな利益を受けると見られています。
というのは、ベトナムの主力輸出品目であるこの製品に対する税率が現在の18%から0%に削減されるからです。これにより、ベトナム紡績縫製部門の年平均成長率が15%~20%程度に増加し、そして、2025年までに繊維製品輸出額が500ドルを超える見込みだと予測されています。
これに関し、ベトナム紡績縫製協会のダン・フゥオン・ズン理事長は「このチャンスを活かすために、ベトナム企業は原材料生産の促進や、現地調達率の向上、製品の価値の向上などに投資する必要がある」との見解を示し、次のように語りました。
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「ベトナム紡績縫製部門の最も大きな試練は糸などの原材料を生産することです。これはTPP加盟諸国の共通の問題でもあります。そのため、原材料生産を促進しなければなりません。これを目指し、我が協会は、人材育成、生産方式の転換、製品の付加価値作りなどを進めます」
TPPのほか、今年中に、ベトナムはEUや、ロシア・ベラルーシ・カザフスタン関税同盟、韓国などとのFTAを締結する予定です。これらの協定はベトナムの輸出入市場の多様化、農産物輸出の促進などにチャンスをもたらすと期待されています。しかし、専門家らは「ベトナムはこれらの協定の厳しい規定を遵守するとともに、全世界的バリューチェーンに参入するために競争力を向上させる必要がある」と指摘しています。ベトナムの国際経済仲裁センターのチャン・ヒュ・フィンセンター長は次のように語りました。
(テープ)
「ベトナム企業は、全世界的なバリューチェーンに参入した場合、そのチェーンの後に立たないよう、競争を受入れ、刷新しなければなりません。これはチャンスであると同時に試練でもあります」
輸出のほか、FTAはベトナム企業の近代的設備・技術の導入、管理能力の向上などにも役立つと見られています。近年、ベトナムは毎年、EUなどから設備、機械、技術などを輸入せざる得なく、その金額が約76億ドルに上っていますが、FTA締結により、その輸入額がはるかに低下する見通しです。こうした中、ベトナム政府は各国とのFTA締結を促進する方針を打ち出しています。
ブー・フィ・ホアン商工大臣は次のように明らかにしています。
(テープ)
「政府はある国への依存を避けるために、輸出入市場を多様化させる政策を取っています。FTA締結は繊維製品や、革靴、農産物などの輸出の拡大に寄与します。一方、輸出の持続可能な発展へ向けて、農業生産や、農産物の付加価値作りなどに有利な条件を作り出し、優遇措置をとります」
TPPや、各国とのFTAの締結を控えて、ベトナム政府は貿易振興計画を立案しています。また、原材料生産地の拡大、裾野産業の開発なども進めています。政府の正しい政策と企業の努力により、ベトナムはFTAのメリットを活用できるようになると期待されています。