既にお伝えしましたように、去る5日、アメリカのアトランタで、ベトナムを含め12カ国が参加するTPP=環太平洋経済連携協定の交渉は大筋合意を達成しました。TPPから得る利益を最大限に生かし、リスクを予測・管理することはベトナム経済改革や国内企業の発展に弾みをつけるとされています。
ベトナムはTPPから最も大きな利益を受けられる国とみられます。TPPの発効後、ベトナムのGDP=国内総生産は2020年に235億ドル増、2025年に335億ドル増となる一方、輸出額は680億ドル増えると予測されています。特筆すべきことはアメリカやカナダ、日本向けの輸出品が0%の税率を適用されることです。
これはベトナムの輸出活動に拍車をかける傍ら、繊維製品、履物、農・水産物などの輸出額は飛躍的な増加を見せるとしています。一方、TPPへの加盟により、ベトナム企業は多くのチャンスに恵まれる一方、少なくない試練にも直面すると指摘されています。
経済専門家グエン・チ・ヒエウ氏は次のような見解を述べました。
(テープ) Hieu
「TPPはベトナムに世界経済に参入する道を切り開き、ベトナム経済を好転させると思います。また、繊維製品や農産物、水産物など、輸出額が高い品目は大きな恩恵を受けるでしょう。」
TPP加盟諸国はいずれもベトナムの重要な輸出先となっていますが、日本とアメリカは加盟諸国向けのベトナムの輸出額の40%を占めています。TPPから最も大きな利益を受けられるのはベトナムの紡績縫製部門と評されています。しかし、TPPの要求に応えるためには紡績縫製企業は全力を尽くさなければなりません。
その中で、加盟国内に輸出する原糸、繊維および衣料品は、各加盟国で製造されたものでなければならないという“Yarn forward(ヤーン・フォワード)”ルールに従うことが求められています。これは織物や染色などの原材料供給に弱みがあり、TPPの加盟国ではない国々からの輸入に頼っているベトナムにとって、即時に解決すべき問題になっています。
タンロイ縫製株式会社取締役会のグ・ドク・ホア会長は次のように語りました。
(テープ) Hoa
「現時点で、ベトナム企業は繊維製品の原材料の原産地に関する要求に応えられません。アメリカや日本から輸入する原材料の価格は非常に高いです。」
これまで、国内企業、中でも紡績縫製企業は国際社会への参入に備え、様々な行動を取ってきました。ベトナム紡績縫製グループは各省庁、地方と連携し、原材料生産地域の設立やデザインと生産を進め、消費者に製品を直接販売しています。ベトナムはアジア諸国の中で群を抜いて、手腕や経験の面で強みを持つことからTPP加盟により紡績縫製分野での大きな利益を得ると予測されています。
他方、ベトナムはアメリカ向けの農産物輸出上位15カ国に入っており、コーヒー、カシューナッツ、コショウ、コメ、お茶などが主要な輸出品となっています。また、TPP交渉参加の日本はベトナムの青果やコーヒーの第3位の輸出先です。
オーストラリアやメキシコ向けの農産物の輸出も順調に行われています。一方で、砂糖や医薬品生産部門はTPP加盟から逆効果を受けてしまうとみられます。というのは、国内の製糖コストが高いものの、市場の開放や輸入割り当ての撤廃が余儀なくされると同時に、世界第3位の砂糖輸出大国であるオーストラリアと競争しなければならないからです。
また、乳製品生産部門も乳製品輸出大国のニュージーランドやオーストラリアとの激しい競争にもさらされるとしています。
こうした状況の中、ベトナム企業はチャンスを最大限に活用し、リスクを抑えれば、世界経済への参入を進め、発展を遂げることでしょう。