ベトナムは気候変動の影響を受ける国の一つとなっています。気候変動に対応するため、2011年に、ベトナム天然資源環境省は「気候変動に対応できる多用途の家作りアイディア」コンクールを行いました。このコンクールで、建設大学の学生・グェン・イク・タンさんは優秀賞を獲得しました。
この50年間、ベトナムにおける平均気温は0,5度から0,7度に上がり、水面の上昇はおよそ20センチに達してきました。また、台風、洪水、干ばつなどの自然災害が頻繁に発生し、人的物的被害をもたらしてきました。ホン河(紅河)沿いにあるダンフォン県リェン・ホン村に生まれ育たれたタンさんは、洪水による甚大な人的物的被害を目撃したことがあります。タンさんは幼いときから、洪水の被害を最小限にするため、何らかの対策をとろうと思っていました。建設大学に入学してから、タンさんは川に浮かんでいる魚の養殖小屋を見ると、洪水防止の家を設計することにしました。 (テープ)
「私は2010年末に、ベトナム建築家協会のコンクールに参加しようと思いましたが、仕事の都合により参加できませんでした。それから、ベトナム天然資源環境省の「気候変動に対応できる多用途目的の家作りアイディア」コンクールに参加した際に、洪水防止の家を設計することにしました。家の設計は1週間ていどでした。」
タンさんはこのように語ります。
そして、タンさんは川に浮かぶ魚養殖小屋を真似て、多用途の半自動の家を設計することにしました。この家は、固定部分と移動の部分から成っています。固定された部分は一階建ての瓦葺の家であり、日常生活の空間となります。また、移動の部分は洪水発生時の生活向けの空間です。移動式家の天上には、雨水の貯水タンク2個が設置されます。タンクの下は野菜栽培用の大きなスライディング・トレイがあります。洪水になると、移動部分が水面に浮かび、2つの水タンクは排水された後、フロートの役割を果たします。一つのフロートは家畜の避難所、もう一つのフロートは人間の生活用空間です。タンさんが設計した家は洪水対策に効果があり、多大な用途を持つので、優秀賞を獲得しました。
都市企画・建築研究院のファム・トイ・ロアン副院長は次のように語っています。
(テープ)
「タンさんの応募作品が受賞した要素は、資材が環境にやさしいということです。というのは、世界における都市建築の傾向では、科学技術の面で多数の成功を収めていますが天然材質に関しては一連の問題を残しているからです。ですから、私達は再生可能な資材の使用を徹底しなければなりません。太陽光、風力の活用は普通のことですが、タンさんは環境に親しんでいる竹を資材にしました。」
ロアン副委員長はこのように語りました。
注目すべきことは、この家は、弾力性がある竹で出来ること、地震などの自然災害にも対応できます。また、竹は安くて、入手しやすい、それに、短期間で完成するので、実用性が高いことが評価されています。
洪水の被害を最小限にするために、タンさんの気候変動に対応できる多用途目的の家が早期に現実化されるよう期待しましょう。