EU=欧州連合は21日の大使級会合で、ウクライナ問題をめぐる対ロシア制裁を来年1月末まで延長することで合意しました。 延長されるのは7月に期限切れとなるエネルギー、金融、防衛関連の制裁で、数日中に閣僚会合で正式に承認する見通しですが、この問題に関し、EU内で亀裂が生じています。
EUのある会議(写真:KT)
EUは2014年のウクライナ危機を受け、本格的なロシアへの経済制裁を導入しました。ロシアもEUからの農産物の輸入禁止で対抗し、経済関係は大きく冷え込んでいます。
EU内の亀裂
EUのロシア制裁は7月に制裁の期限切れを迎えますが、ウクライナ情勢の改善がみられないため、月内に来年1月まで半年間の延長を決める方向です。しかし、その背景の中で、多くのEU加盟国はロシアとの関係の改善を訴えています。
EUはウクライナの和平合意(いわゆるミンスク合意)が完全に履行されるまでは、経済制裁を解除しない原則を掲げていますが、制裁導入から2年を経て、イタリアやギリシャなどが制裁延長へ慎重論を展開するなど、EUの足並みの乱れも目立っています。制裁がウクライナ情勢の打開につながっていない一方、ロシアへの輸出禁止への影響に伴う経済損失に経済界や農家の不満が広がりつつあるためです。
ギリシャのチプラス首相は5月、プーチン氏をギリシャに招いて首脳会談し、制裁は「非生産的だ」と批判しました。ドイツとフランスはミンスク合意を仲介した立場があり、表向きは和平合意の完全履行まで制裁を続けるべきだとの立場です。しかし、2015年に両国の首脳がともにロシア訪問するなど、対話路線もにじませています。
8日にはフランス上院が制裁緩和を呼び掛ける決議を採択しました。ドイツ閣僚からも制裁の段階的解除の検討を求める声が上がっています。
双方に多大な損害
実際、ロシアにとってEUは重要なパートナーです。逆に、EUにとってもロシアは大きな経済相手国と見做されています。2015年には、EUとの商取引額がロシアの貿易総額の45%を占めました。一方、ロシアは、EUの最大の貿易相手国の中で、アメリカや、中国、スイスに次いで、4位に立っています。そのため、制裁措置は双方にも大きな損失をもたらしています。
具体的には、2015年、双方間の貿易額は2013年のおよそ4200億ドルから2300億ドルに激減しました。さらに、7月8日と9日に、EU加盟国のほとんどが参加する北大西洋条約機構が首脳会議で、バルト3国や東欧での対ロシア抑止体制の強化策を打ち出す見通しです。対ロシア制裁延長とその抑止強化が立て続けに予定されるなかで、ロシアとの関係はさらに悪化しかねないと予測されています。
こうした中、アナリストらは、「双方の利益のために、今後、ロシアとEUは関係を改善しなければならない」とした上で、「関係改善のためにどのような措置をとるかが焦点となっている」との見方を示しています。