不安な情勢に巻き込まれるシリア

(VOVWORLD) - アメリカのトランプ大統領は10日、シリアでの化学兵器使用疑惑への国連安保理の対応が不調に終わったことを受け、アサド政権に対する軍事行動に向けてイギリス・フランス両国と調整を本格化させました。
不安な情勢に巻き込まれるシリア  - ảnh 1  戦後のシリア光景(写真:AFP/Getty Images)

2017年末、シリアの人々は過激派組織 IS=「イスラム国」の支配から解放されたことを喜んでいました。彼らはこれから、平和の中で、新しい生活を送ることができると望んだからです。しかし、それ以来、シリア情勢がずっと混迷が続いています。

東グータ地区への空爆

アサド政権は、今年2月から首都ダマスカス近郊にある東グータ地区に激しい空爆や砲撃を行っています。ここは反政府勢力の拠点であり、政権側はこれまでに地区の9割以上を制圧しました。事態が緊迫する引き金となったのは、今月7日に行われた空爆です。

この際、呼吸困難に陥る人たちが相次ぎ、多くの女性や、子どもが床に倒れ、口から泡を吹くなどして苦しむ様子が映像などで伝えられています。化学兵器攻撃を受けた際の典型的な症状です。現地の医療団体のまとめによりますと、少なくとも49人が死亡し、多数のけが人が出ています。

化学兵器の使用は国際法違反です。反政府勢力は、「アサド政権が化学兵器を使った」と非難していますが、政権側は「でっちあげだ」と強く否定しています。シリアの内戦ではこれまでも化学兵器の使用が疑われる攻撃が繰り返され、いつもこの平行線をたどっています。

アメリカのトランプ大統領はアサド大統領を「けだもの」と強く非難するとともに、その後ろ盾となっているロシアや、イランにも責任があると批判し、軍事攻撃の可能性を示唆して警告しました。

9日午後に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合では、アメリカはアサド政権の責任を追及する立場を強調しましたが、ロシアは「証拠なしにシリアや、ロシアに責任をなすりつけている」と反論し、アメリカとロシアの対立が改めて鮮明になりました。

アメリカのトランプ大統領は10日、シリアでの化学兵器使用疑惑への国連安保理の対応が不調に終わったことを受け、アサド政権に対する軍事行動に向けてイギリス・フランス両国と調整を本格化させました。これを受け、ロシア軍はシリアに新型のS-400対空機システムの新ユニットを納入し、戦闘態勢を整えています。

多くの計画がある

 政治アナリストらは「長く前からアメリカはシリアへの影響力を増加させる企みがある」としています。これと同時に、アメリカはシリアの天然資源を開発すると共に、アサド政権を転覆させ、反ロシア政権を構築することを望んでいます。

この目的を実現するため、アメリカはアサド政権が化学兵器を使用することを糾弾しています。また、アメリカは中東諸国に対するロシアの影響力を引き下げる意向を持っています。

10日、トランプ大統領が「24時間から48時間以内に重要な決断をする」と発表したことはアメリカがシリアへの軍事オプションを選択し、シリアでの緊張情勢を一段と増すことは間違いないでしょう。

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