2014年に、世界情勢が複雑に推移しましたが、その中で、歴史上最も残忍で残酷なテロリスト集団と呼ばれるIS=イスラム国は全世界に影響を与えました。アメリカをはじめ、多くの国はイスラム国に対応するために力を入れていますが、今後も多くの困難に直面すると予想されています。
イスラム国が人質を処刑(写真:Press TV)
イスラム国はイラクとシリアをまたいで活動するイスラム教スンニ派の過激派です。2003年のイラク戦争後、無差別攻撃を繰り返してきた国際テロ組織アルカイダ系の流れをくみ、2004年にイラク旅行中の日本人を 殺害した「イラクの聖戦アルカイダ組織」出身者らで構成されるものです。かつては「イラク・イスラム国」と呼ばれました。
全世界に反対する活動
イスラム国は、シリアが内戦状態に陥った2011年以降、シリアでの勢力拡大を画策しています。2014年6月にイラク第2の都市モスルを制圧し、イラクとシリアの国境地帯にイスラム国家の樹立を宣言しました。イスラム国は外国でもメンバーを募集しており、世界80ケ国からおよそ20万人の戦闘員が集っています。
これまで、多くの国と地域でテロ攻撃を行い、各国の部隊だけでなく、民間人や、外国人なども標的にしています。イスラム国は昨年8月19日、2012年末にシリアで誘拐されていたアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏を処刑するなどの動画を公開し、全世界の憤怒と非難を招きました。
世界の反テロ戦
イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の掃討に向け、アメリカのオバマ大統領は昨年9月、「幅広い有志連合」を構築すると発表しました。アメリカの呼びかけに世界各国が答えました。この「有志連合」には、 ヨルダンや、サウジアラビアなどのアラブの5か国が爆撃に参加したのを始め、50か国以上がアメリカに協力する姿勢です。
注目されるのは、ポーランドのような東欧諸国さらにはデンマークのような北欧諸国が参加している事実です。デンマークはF16戦闘爆撃機を7機とパイロットなどの要員140名をクウェートの空 軍基地に送り、イラクでの対イスラム国の爆撃に参加しています。
期待通りの結果を収めず
しかし、各国の努力は、期待通りの結果をまだ収めていません。イラク西部地域を手始めにアメリカ軍の攻撃が始まって既におよそ5カ月が過ぎましたが、イスラム国を弱体化するにはほど遠いのが現状です。
オバマ政権は「作戦には数年間を要する」としていますが、「数年間」で済む保証はまったくありません。作戦が長期化すれば、現在は人道支援を担う日本などにも、軍事面での寄与や、負担を求める動きが出てくる可能性があります。
「対イスラム国作戦という泥沼にアメリカがはまり込んで国力をそがれれば、多くの問題が発生する」と懸念する声も米欧では出始めています。