地中海で、シリア人難民= AP
IOM=国際移住機関の統計によりますと、2015年に入って地中海を渡るなどして欧州諸国に流入した難民や移民が100万人を超えました。IOMは、1年間で欧州にたどり着いた移民や難民の数としては、第2次大戦以来、最大規模と指摘しました。地中海を渡った難民らのうち約50万人が内戦の続くシリア出身者でした。
解決策に迷っている
大勢の難民や移民の流入を抑えようと、スウェーデンとデンマークが入国者に対する本人確認の検査をこれまで以上に厳しくするなど、欧州で国境管理を強化する動きが広がっています。去年1年間に16万人以上の難民を受け入れ、人口当たりの難民受け入れ数がヨーロッパで最も多い北欧のスウェーデンは、大勢の難民や移民の流入を抑えようと、電車やバス、フェリーなどで入国する人に対して本人確認をこれまで以上に厳しくする措置をとっています。具体的には、隣国のデンマークとの国境で検問を行い、入国する人のパスポートなどの証明書を確認するとしています。スウェーデンでは、これまでEU=欧州連合の域内移動を自由にするという原則に基づき、デンマークとの間では例外的な期間を除き出入国の検査は行っていませんでした。デンマークでも南部のドイツとの国境で証明書での本人確認を10日間、実施すると発表しました。域内の移動の自由が原則として認められてきたEU各国では、去年11月にパリで起きた同時テロ事件をきっかけに、国境管理を強化する動きが広がっています。
しかし、加盟各国で難民16万人の受け入れを分担するとしたEUの計画に対し、ハンガリーやスロバキアが法的措置も辞さないとして反対するなど、EU全体として統一した立場を見出せるかどうかは不透明な状況が続いています。ドイツのデメジエール内相は6日、ベルリンで記者会見し、「ドイツに来る難民や難民申請者の数があまりにも多い。ことしも同じことを繰り返してはならない」と述べ、流入に歯止めをかけるため、政府として対策を急ぐ考えを示しました。
乗り越えにくい障壁
大量のイスラム教徒の流入は、欧州がさらに多文化社会に変化する転換点であると指摘されています。これは現在の大きな障壁です。スロバキアは、キリスト教徒の難民だけを受け入れると発表しました。ハンガリーのオルバン首相は「キリスト教に根差した欧州の文化がイスラム教徒主体の移民に脅かされる」と強調しました。スロバキアやハンガリーは小さな国であり、宗教や文化も単一の要素が強くなるという傾向を持つ国家であることから、異なる文化の移民を受け入れるのは難題となっています。その一方で、ドイツやフランスは80年代から大量の移民を受け入れたため、多文化共生社会が存在しています。そこで、これらの国は多様文化と宗教を受け入れやすいのです。もう一つの障壁は、欧州諸国における反イスラム教主義が広がっているということです。そこで、EU加盟諸国における移民の受け入れは難しくなることです。2016年に入り、それぞれの欧州国は移民の受け入れ計画と政策を公表しましたが、以上に分析した問題点が解決されなければ、過去最悪となる移民危機の解決に向けたコンセンサスを得にくいことでしょう。