中東の2大盟主国であるサウジアラビアとイランが(現地時間)3日外交関係を断絶し、中東の情勢が緊迫化しています。対立の発端は2日、テロ活動に従事した罪でシーア派の有名聖職者ニムル師を含む47人の集団処刑を行ったと、サウジが発表したことです。同じシーア派の指導者が国を治め、同師を処刑しないよう要請してきたイランは猛反発しています。今回の情勢は、中東地域の緊張をさらに高める恐れがあります。
サウジアラビアとイランの間緊張が高まっている
(写真:tasnimnews)
サウジとイランの対立だけではない
サウジアラビアがニムル師を処刑したと発表した後、イランのデモ隊がサウジアラビアの大使館に放火しました。これを受け、サウジアラビアは、イランとの外交断絶を表明しました。そして、イランとの対立を深め、航空便の運航と貿易を停止する方針を明らかにしました。
バーレーンとスーダンは4日、サウジアラビアに続きシーア派の大国イランとの外交関係を断絶すると表明しました。断交を表明したバーレーンは、王家を中心とする指導者層がスンニ派であるほか、スーダンも、国民の多数をスンニ派が占めていて、サウジアラビアに同調する動きを強めています。また、UAE=アラブ首長国連邦も、イランに駐在するUAEの大使を召還すると発表しました。
一方、イランの最高指導者であるアリー・ハメネイ師は、「神の報復を受けるだろう」とサウジアラビアを強く警告しました。中東各国のシーア派居住地では、デモが広がっており、暴力に発展したデモもありました。イラクの首都バグダッド郊外で3日夜、少なくとも2カ所のイスラム教スンニ派(礼拝所)モスクが襲撃され、聖職者ら2人が死亡しました。バグダッドのサウジ大使館前では4日、処刑に抗議し、サウジとの断交を求める大規模なデモが行われました。スンニ、シーア両派の対立が先鋭化しています。
緊張に続く緊張
スンニ派大国のサウジアラビアとシーア派大国のイランは、昔から、宗教を始め、政治・経済の分野においてあまりよくない関係が続いています。特に、両国関係は、2011年に中東に広がった民主化運動いわゆる「アラブの春」で、一気に険悪化しました。サウジなど湾岸諸国は、国内のシーア派住民によるデモを「背後から手引きした」とイランを非難しました。
この5年間、続いているシリア内戦では、イランはシーア派のアサド政権を支援する一方、サウジはスンニ派の反政府勢力を支えているとされています。さらに、シーア派とスンニ派の対立によって起きているイエメン内戦では、サウジは、イランの支援を受けているシーア派武装組織フーシを空爆しているなど、対立が深まる事案も続きました。
こうした中、サウジがニムル師を処刑したことは、スンニ派とシーア派の対立を深め、両派が混在する中東全体の分断を招いています。サウジアラビアとイランの緊張を緩和させる有効な対策がなければ、中東地域の緊張はますますエスカレートする恐れがあります。