難民問題をめぐるEUの亀裂

(VOVWORLD) -

EU=欧州連合の欧州司法裁判所は9月6日、加盟国に中東などからの難民受け入れの分担を定めたEUの決定を支持し、割り当てを不当だとするハンガ リーとスロバキアの訴えを棄却しました。両国は今後も割り当てられた難民は受け入れない構えで、難民対策で連帯を重視したいEUとの確執が収束する見通し は立たなくなっています。

EUは12万人の難民を加盟国で分担する方針をとっていますが、この判決により、ハンガリーはおよそ1200人を、そして、スロバキアはおよそ800人を受け入れなければなりません。

難民問題をめぐるEUの亀裂 - ảnh 1     ブダペストに集まる難民(写真:AFP/VNA)

2年前からの亀裂

シリア内戦などの影響で、2014年ごろから欧州に前例のないペースで難民が流入しています。EUは2015年9月下旬の内相会議で、難民の「玄関口」となっていたギリシャとイタリアに滞留する約16万人の難民を加盟国の経済規模などに基づいて割り当てる緊急対策を賛成多数で決めました。

これによりますと、各国は一部の難民を受け入れる義務があります。その割合は各国の経済力により異なりますが、具体的には、ドイツは20%、フランスは15%、ハンガリーとスロバキアなど東欧諸国は1%ないし2%を受け入れなければならないとしています。

しかし、ハンガリーとスロバキアはルーマニア、チェコと共に反対票を投じ、その後、決定の無効を主張して提訴しました。従って、受け入れは計画通りに実施されていません。これまで受け入れられた難民数はおよそ2万7000人しかいません。

東・中欧諸国は反対の理由として様々な問題を取り上げていますが、その中で、その決定が強制的であること、 東欧と中欧諸国のほとんどが貧困国であること、国内の安全保障が脅かされることなどがあります。

矛盾続く欧州

9月6日に出された欧州司法裁判所の決定は欧州内の団結にマイナス影響を与えるものと評されています。

難民問題をめぐるEUの亀裂 - ảnh 2 セルビアのベルカソボ村に集まる難民(写真:AFP/VNA)

判決は「ギリシャとイタリアは難民危機の衝撃に対処するため適切だった」と指摘しましたが、これに対し、ハンガリーのシーヤールトー外相は記者会見で、「理不尽で無責任だ」と判決を強く非難するとともに、「国民の希望に反した難民割り当てを拒否するためには何でもする」と述べ、今後も強硬姿勢を維持する意向を示しました。

スロバキアのフィツォ首相も「判決を尊重する」としながらも、治安悪化への懸念から、「割り当て反対の姿勢に変わりはない」と確認しました。

一方、ユンケル欧州委員長は、「この計画に反対する国々は難民問題解決のための支援金を受けない」と警告しました。

また、欧州委員会のディミトリス・アプラモプロス移民・内務・市民権担当委員はハンガリー、ポーランド、チェコの東欧3カ国の加盟国に対し、「EUの条約義務不履行を調査し、状況次第では制裁など提訴手続きに入る」と表明しました。ドイツのメルケル首相も難民受け入れを拒否している国々を批判しています。

この間、EUではイギリスの離脱決定などを受けて、加盟国間の結束が重視され、対立の先鋭化をもたらすような罰則案などの検討は先送りされてきましたが、今回の欧州司法裁判所の決定はEU内の深い亀裂を示しています。そして、その問題解決は容易ではないとの懸念も出ています。

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