北海道函館市から宮田 繁様のエッセイ

(VOVWORLD) --忘れられないベトナムの食べ物-
北海道函館市から宮田 繁様のエッセイ - ảnh 1     牛肉のフォー・ボー

日本と同様南北に長いベトナムには、その地方独特の食べ物や料理が沢山あると、日本でも紹介されています。

 そんな中でも定番と言ってよいのは、米粉で作った麺をスープで食べる「フォー」です。この「みんなが知っている食べ物」が私の忘れられない食べ物の一つになったのです。

 12年ほど前、私は勤めていた会社が新しい船を建造することとなり、単身オーストラリア、タスマニア州のホバートに長期滞在していました。ホバートは、タスマニア島で最も大きな町で、地元の人や観光客向けのレストランやパブ、英国風の建物が立ち並ぶ、大変きれいな町です。

 オーストラリアは畜産業が国の基幹産業であり、家畜への伝染病予防の観点から、外国から食品を持ち込むことを厳しく制限しています。

さらにタスマニア島は、その多くの部分が世界自然遺産に指定されおり、オーストラリア大陸よりも更に厳しい規制がしかれています。滞在する人は、いつも食べているものを持ち込むことはできません。日本から送ってもらうことも、ホバートでは許されないことです。食べる物は現地で何とかするしかないのです。

 ホバートでの私の食事といえば、朝は仕事へ行く途中のカフェで、仕事先ではそこに開設されている売店で買ったサンドイッチをコーヒーと一緒に食る生活が続いていました。もちろん、商店街には「寿司バー」などがあり、日本風の食べ物も売っています。しかし、それらは普段日本人が食べる物とはちょっと違った味付けをした、地元の人向けの寿司だったのです。

 滞在期間が2か月を過ぎた日曜日、ホットドッグやフライドポテトに嫌気がさし、日本風のものを探して目的も無く街をぶらぶらしていました。すると、ちょっと見慣れない言語の看板が目に入りました。「きっと、今はやっているタイカレーの店だな。」と思いつつ近づいて見ると、ベトナム麺の店だったのです。それまで、気づかずにいた店だったので、ちょっと覗いてみることにしました。

北海道函館市から宮田 繁様のエッセイ - ảnh 2      鶏肉の「フォー・ガー」

 メニューは、フォー、ゴイクォン、焼きそばなど多くはないのですが、それまでベトナム料理を食べたことはなかった私は、迷うことなくフォーを注文したのです。 カウンターで料理を受け取り、さっそくスープを口に運ぶと、少し香辛料が効いた味が口に広がりほっと一息。

箸で麺をつまんで食べる。見た目は違う姿をしていますが、なんだか日本のうどんを食べている感じがして嬉しくなりました。

 私は、フォーのスープが本当はどんな味なのか知りません。でも、茹でた麺を温かいスープと一緒に食べるという点は、日本とベトナムあるいは、アジア各国の文化との共通点かもしれません。

 このとき食べたフォーの味を忘れられずに、帰国するまでの間、日本の味を楽しむ場所として、何度かこの店に足を運びました。

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