在越元坂場三男大使
今日のこの時間は2008年1月から2010年9月までベトナムに駐在した元坂場三男大使のメッセージをご紹介します。
坂場三男大使はベトナム在任中に63の省に足を運びました。坂場大使が一番印象を受けたのはベトナムの各少数民族の人々の衣装の華やかな色合いである」と言うことです。「どうやって、その貧しい人々の生活を美しくするのか」、坂場元大使はずっと考えていました。そして、ベトナムで大使として勤務していた2年7ヶ月間、日本政府による複数のODA無償援助プロジェクトが、ベトナムの貧しい村々で実施されてきています。やがてベトナムと別れる日が来ました。2010年9月に坂場元大使はベトナムで大使任期を終えました。この地に離れる前、坂場元大使はベトナムの人々に心を込めたメッセージを送りました。次にその内容をお伝えします。
「最後にベトナムの人々に一言。ベトナムはもうそろそろ「ベトナム戦争」(ベトナム人の言う「抗米戦争」)のくびきから(精神的な意味で)抜け出る時だと思います。ASEANの加盟国になり経済面ではWTOにも加盟して、国際社会の一員として大きな役割を積極的に果たすべきだし、経済面での国際競争も対等に戦って勝ち抜いて行かねばなりません。モラルの面でも「戦争と貧困の時代」の精神構造を克服して、近代国家を築いていってほしいと思います。汚職・腐敗の問題や公衆衛生の観念、規則順守の精神(モラル)など在勤中に気になったことが沢山あります。個人の生活から国のあり方に至るまで、ベトナムの方々は(長期計画はあるものの)実際には短期的な「物差し」で考える傾向が強いので、国が平和で安定し経済も発展する今となってはもう少し長い視野で将来を見据え、制度設計を考えていくことを望みます。「ベトナム人は楽観主義者である」というのが私の持論であり、それはベトナム人の大いなる美徳だと思うのですが、同時に個人レベルでの責任感のようなものでしっかりと裏打ちされないと「軽薄」になってしまいます。ベトナムは日本とは似て非なる国であり、興味が尽きません。今、私の最大の関心は「10年後のベトナム」です。その時、この国は何が変わり、何が今と同じなのでしょうか。2020年に私は必ずベトナムを再訪したいと思っています」