山崎  こんにちは、山崎千佳子です

ソン こんにちは。ソンです。今日のハノイ便りは、カットバラングールの保護活動についてお伝えします。

山崎 カットバラングール？カットバ島に住む動物ですか？

ソン はい。カットバ島にしかいない珍しいサルです。白い頭のラングールとも呼ばれていて、絶滅のおそれがある野生生物を記載する国際自然保護連合のレッドリストに入っています。

山崎 カットバ島はハイフォンの近くにあるんでしたっけ？ベトナムの会社の社員旅行の行先としてよく聞くことがあります。

ソン そうですね。私も学生の時に旅行に行きました。カットバ島は、ベトナム北部の港湾都市ハイフォンの沖合いにあります。この島は、ハロン湾にある大小およそ２０００の岩や島の中で一番大きな島です。

山崎 ２０００。ハロン湾にはそんなにたくさんあるんですね。カットバ島へは船で行くんですか？

ソン はい。ハイフォンからもハロン湾からもフェリーが出ています。ハイフォンからだと１時間ほどです。

山崎 確かカットバ島は、その自然が魅力なんですよね。手つかずのままの自然を楽しむことができるという。

ソン そうなんです。海はもちろん、森林や谷川、盆地、洞窟などがあって、美しい自然に恵まれています。私も海でずっと泳ぎました。

山崎 ソンさんはインドア派かと思ったら、海好きなんですよね。

ソン はい（笑）。カットバには国立公園もあります。その総面積は1万5千ヘクタールで、原生林の面積は570ヘクタールです。

山崎 原生林が５７０ヘクタールって、どれくらいなんでしょう？

ソン 日本っぽく言うと、東京ドームおよそ１２０個分です。

山崎 それは広いですね。原生林がそれだけあると、ここならではの動植物も多いでしょうね。

ソン そうなんです。カットバ国立公園にはたくさんの生き物が生息しています。

山崎 そのうちの１つが、カットバラングールなんですね。絶滅のおそれがある動植物のリストに入っているということですけど、そんなに深刻ですか？

ソン はい。観光が盛んになって、カットバ島の経済が急速に発展したことから、自然環境に悪い影響を与えているんです。なので、カットバ国立公園ではこのラングールの保護活動に取り組んでいます。現在、この島に生息しているカットバラングールの数は60だけです。

山崎 この島にしかいないわけですから、世界でも６０匹だけなんですよね。守らないとだめですね。カットバ国立公園の管理者（ Nguyen Huy Cam）の話です。

（テープ）

「カットバラングールは石灰岩の山に住んでいて、岩に生えている植物を食べています。夜は、洞窟や岩石の上で眠ります。ラングールの洞窟は海に面しているので、肉眼でも見えます。」

山崎 カットバラングールの保護のため、カットバ森林管理課は国立公園の周辺に住む住民と協力して、個体別にラングールの生活を観察。その性格を把握した上で、ふさわしい保護方法を考えているということです。再び、カットバ国立公園管理者（ Nguyen Huy Cam）の話です。

（テープ）

「ラングールは１年中出産しますが、１回で１つの個体を産むます。習性としては、1時間半から3時間くらい１つの場所に静かに座り続けます。正確な個体数を出すためには、ラングールが住み家にしている洞窟に戻るまで待たなければなりません。」

山崎 カットバラングールの保護活動は、ドイツの団体の支援によって２０００年から行われているということです。

ソン そのプロジェクトリーダーによりますと、カットバラングールの遺伝子は中国南部に生息する白い頭のラングールとほぼ同じという研究結果が出たそうです。しかし、カットバーラングールは陸から離れた石灰岩の土地でもやっていけるよう、徐々に進化していったということです。

山崎 公園の管理者が、ラングールの洞窟は海側から肉眼で見えると言っていましたが、人間を見ても逃げないんですか？

ソン いえ。聞き慣れない音を耳にすると、住み家を変えるそうです。

山崎 というと、保護活動も慎重にやらないとなかなか進みませんね。

ソン そうなんです。ラングールは険しい岩山に住んでいることや、ラングールの保護に対する地元の人の意識が低いことなども問題となっています。

山崎 そして、観光や経済が発展して、自然に悪影響を及ぼすというのもありますね。ラングール保護プロジェクトリーダー（Neahga Leonarg）の話です。

（テープ）

「その動物自体を保護するだけでなく、それを取り巻く環境や生物の多様性も考え、他の動物も保護しなければなりません。カットバ国立公園は生物多様性が高く、2004年にユネスコの生物圏保護区として認定されました。経済を活性化させる一方で、自然環境保護にも配慮しなければなりません。」

山崎 保護活動というのは、具体的にはどんなことですか？

ソン ３つの目標が掲げられています。第一に、地元の住民を対象にラングールの密猟を禁止して、その数を維持することです。二番目に、生息地を守るため、厳格な保護地域を設置すること。三番目に、ラングールの繁殖力を増やすということです。

山崎 進捗状況はどうなんでしょう？カットバ国立公園管理者トップ（ Hoang Van Thap）の話です。

（テープ）

「ラングールの保護地域が厳密に決められてから、保護はきちんと行われています。カットバ島の生物多様性を考え、島がどんなに発展しても自然遺産を守り、経済や環境からの悪影響を最大限に抑えることを堅く守っています。」

山崎 保護活動では、これまで２つのプログラムが実施されたそうです。

ソン はい。「ラングール保護グループ」と「森林保護クラブ」です。生物を含め、こういった環境保護はいくつかの組織や個人の仕事ではなく、すべての人の責任ですからね。

山崎 そうですね。これは単にカットバラングールだけの問題ではなくて、世界中のいろいろなところで考えられるべきことですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「～」です。

（曲）

「～」をお送りしました。今日のハノイ便りは、カットバラングールの保護活動についてお伝えしました。それでは今日はこの辺で。