カントー市のドンカータイトゥー保存開発

(VOVWORLD) - 南部メコンデルタのカントー市は、世界無形文化遺産の伝統民謡ドンカータイトゥーの保存・開発に取り組んでいます。

山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナム南部の伝統民謡、ドンカータイトゥーについてお伝えします。

山崎 ドンカータイトゥー。聞き覚えがあります。前にハノイ便りでご紹介しましたね。ユネスコの無形文化遺産になったものでしたっけ?

ソン そうです。2013年に登録されました。

カントー市のドンカータイトゥー保存開発 - ảnh 1 外国人留学にドンカータイトゥーを教える授業

山崎 確か、前は南部の島にあるドンカータイトゥークラブについて取り上げたと思ったんですが、発祥の地がその島なんですか?

ソン いえ。南部なんですが、はっきり「ここ」というのはわかっていません。元々はフエの宮廷雅楽だったものが、19世紀の終わりに南部に広まったようです。

山崎 ユネスコの無形文化遺産に登録されてから、何か状況は変わりましたか?他の無形文化遺産は保存活動が活発になっていますよね。

ソン はい。ドンカータイトゥーも同じです。さらにベトナム南部各地に広がっています。今日は特に、南部のカントー市での動きについてお伝えします。

山崎 前にも話したことがあるかもしれませんが、ベトナムの無形文化遺産は北部のものが多いですよね。クアンホとかカーチューなど。

ソン そうですね。ベトナムは北部から始まって、南部は歴史が浅いので、やはりそうなりますね。

山崎 と言うと、南部の人はみんなこの貴重な文化遺産の保存に張り切ってますか?

ソン はい。ドンカータイトゥーは南部文化の源にもなっていると言われています。生活に活気や潤いが生まれるそうです。

山崎 すごいですね。楽器の演奏と一緒に、歌うんでしたっけ?

ソン そうです。ドンカータイトゥーを漢字で書くと「琴歌才子」、琴、歌、才能の才、子供の子、と書きます。琴に合わせて歌う才子という意味です。才子はベトナム語で、楽器も歌もできる人になります。

山崎 あれ、楽器は琴だけでしたか?何か他の楽器も使われたような。

ソン はい。何種類かの民族楽器、主に弦楽器ですが、使われます。農作業の後などにみんなで集まって、地面に座って演奏する事が多く、農民の娯楽として行われてきました。

山崎 本当に人々の生活に密着したものですね。

ソン そうです。南部の人達はドンカータイトゥーを歌う時、原曲をもとのまま歌うのではなく、その時の気持ちで、歌詞とメロディーを少し変えます。この民謡の特徴の一つです。

山崎 へええ、すごい。即興ミュージシャンですね。聴く人も引き付けられますね。

ソン そうですね。 そして現在は、ベトナム南部で2000以上のドンカータイトゥーのグループが活動しているそうです。メンバーの数は、およそ10万人に上ると推測されています。南部のメコンデルタ最大の都市カントーには、170のグループがあります。

山崎 カントーはホーチミンの近くですよね。

ソン ホーチミン市から西へおよそ160kmのところにあります。メコンデルタ地方で最も重要な経済や文化の中心地です。

山崎 観光もいろいろありましたね。水上マーケットも有名ですし、果樹園などを訪れる農村ツアーも人気になっているんですよね。

ソン はい。ホーチミンなどから、1泊、2泊のツアーが多くなっています。最近は、こういうツアーの目玉として、ドンカータイトゥーが注目されているんです。

山崎 へえ。力を入れていますね。

ソン 去年の9月から、カントー市の観光スポットとして知られているカイラン水上マーケットとニンキエウ船着き場で、毎週土日の朝、ドンカータイトゥーの公演が行われています。

山崎 観光客の人たちにばっちりピーアールできますね。水上マーケットでは、どんな風に行われるんですか?

ソン 歌い手達がボートに乗って歌います。水上マーケットで地元の人の日常の様子を見ながら、大事な文化の1つであるドンカータイトゥーが楽しめるのは最高だと言われています。観光客(タイン・フィエン)の話です。

(テープ)

「カントー市ならではの水上マーケットの中で、好きなドンカータイトゥーを無料で聴けるのは何とも言えません。こういう企画は、若い人たちや多くの人にこの民謡を理解してもらうのに役立つと思います。」

ソン そして、カントー大学では、外国人留学生を対象に、ベトナムの文化について学べる「熱帯のコマ」と呼ばれる授業を行っていますが、その中で、ドンカータイトゥーも紹介されています。

山崎 熱帯のコマ。1コマ、2コマという大学の授業単位ですね。これはおもしろそうですね。

ソン はい。音楽担当の講師は、ドンカータイトゥーを楽譜におこすなど学生たちにわかりやすくする工夫をしたそうです。

山崎 その講師(レー・ディン・ビック)の話です。

(テープ)

「オーストラリア、フランス、日本などから来た留学生に、メコンデルタの音楽の美しさを教えています。みんなこの授業が好きで、ドンカータイトゥーをはじめとして、この地方の音を夢中で学んでいます。」

山崎 カントー市のドンカータイトゥーのグループは170あるんでしたっけ?それだけあれば、保存活動は順調ですか?

ソン そうとも言えないようです。活動に参加しているのは、主に40代ぐらいからの中年層なので、若い世代の関わりが課題となっています。

山崎 何にしても、若者たちの関心が重要ですね。伝統音楽にはあまり興味がないという若者が多いのは、どこの国でも同じかもしれません。

ソン そうですね。そこでカントー市は、若者を対象としたドンカータイトゥー教室を開いたり、ドンカータイトゥーを学校の課外活動に取り入れたりするなどしています。ドンカータイトゥーの大会もよく行っています。

山崎 学校で民謡を教えるのはいいですね。

ソン そう思います。カントー市は、それぞれの学校で少なくとも一つのドンカータイトゥーのグループを作るという目標を掲げているそうです。カントー市の文化センター副所長(キエウ・ガ)の話です。

(テープ)

「ドンカータイトゥーを学校で教えれば、この民謡を歌える若い人が多くなります。でも、適切なやり方が大事です。小学校では簡単で覚えやすい歌を教えますが、中学校ではある程度難しい歌というようにです。指導者、学校でドンカータイトゥーを教えられる歌い手も集めなければなりません。とにかく、学校を通しての普及を進めたいと思います。」

ソン 現在、カントー市は、2016年から2020年期のドンカータイトゥー保存開発計画を展開していますが、今のところ、うまくいっているようです。

山崎 有形より無形の保存の方が難しいですからね。ソンさんは、ドンカータイトゥーは歌えますか?

ソン 歌えません(笑)。歌は南部(なま)りですし、そうでないとその民謡の雰囲気が出せないので、無理です。

山崎 なるほど。やはりその土地の人でないと、なかなか難しいですね。ではおしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ユネスコの無形文化遺産にもなっているベトナム南部の伝統民謡、ドンカータイトゥーとその保存についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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