(VOVWORLD) - ハノイは伝統芸能カーチュ―を守り発展させる事業の先頭に立っている地方の一つです。
ホアイ こんにちは、ホアイです。
ソン こんにちは、ソンです。先月上旬、中部ハティン省で、ベトナムの伝統芸能カーチューの全国フェスティバルが開催されましたね。
ホアイ そうですね。今年のフェスティバルには、13の省と市から300人以上のアーチスト・芸人が参加しました。今回のフェスティバルは、カーチューを守り発展させる事業を評価するもので、フェスティバルの結果は、カーチューを「緊急保護を要するユネスコ世界無形文化遺産」リストから「人類の代表的無形文化遺産」リストに入れるようユネスコに提案することに使われるようですね。
ハノイカーチュ―クラブの演奏 |
ソン 大切なことですね。伝統芸能カーチュ―は2009年10月にユネスコによって世界無形文化遺産に認定されてから9年が経ちましたが、カーチュ―を守り発展させる事業は多くの成果を収めたと評されています。その中で、ハノイはその事業の先頭に立っている地方の一つです。今日のこの時間は、そんなカーチュ―に対するハノイの取り組みについてお伝えします。
ホアイ はい。まず、カーチュ―について簡単にご紹介しましょうか。ベトナム語で、「カー」は歌、「チュー」は札という意味があります。歌に対するご褒美というか、聴いていた人から竹でできた札をもらって、その札に書いてある金額をもらったことから、カーチューと呼ばれるようになりました。
ソン カーチューは、総合伝統芸能という感じで、3つの伝統楽器の演奏に合わせて、古いベトナム語の詩を読む詩吟のようなものです。これらの楽器は弦楽器のダンダイ(Dan day)、打楽器のファック(Phach)、それにチョンチャウ(Trong chau)という太鼓の3つです。カーチューの歌詞は古いベトナム語で、漢字を応用して作られたチュノム文字や漢詩で書かれています。かつてはこれを読んですぐ理解出来る学者や知識人の間で流行りました。昔のベトナム語の歌詞ですけど、今のベトナム語とはちょっと違うくらいで、聴いている人はその意味を理解できるんです。
ホアイ 歌詞の内容のほとんどが、祖先や神を称えるものです。15世紀から19世紀の間、カーチューは村の集会所や資産家の家、宮廷などで特別な日に上演されてきました。その後は、村の祭りや結婚式、長寿を祝う席などでも行われるようになって、庶民の間にも広まりました。
ソン カーチューは主に、北部のフート省から中部のクアンビン省まで歌われていて、全土でなくても、15の省や市と広い範囲になるので、保存活動が難しくなっています。
ホアイ その中で、カーチューの発祥地の一つとされているハノイでは、多くのカーチュークラブが活動を行っており、その保存・開発事業は精力的に進められています。
ソン ユネスコの世界無形文化遺産に認定された2009年にはカーチュークラブの数は9つでしたが、現在は14になりました。これらのクラブのメンバーの数はおよそ240人で、その中の50人は、カーチュ―を教えられるレベルの人たちです。特に、その中のハノイの29人の芸人は「優秀芸人」(Nghe sy uu tu)として国に認定されています。
ホアイ それより重要なことはカーチュ―に興味を持つ若者や、カーチュ―クラブに参加する若者が増えつつあるということです。長年カーチューを研究している音楽家ダン・ホアイン・ロアンさんは次のように話しました。
(テープ)
「カーチュ―のコンテストがよく行われていますが、これらのコンテストで、多くの若いタレントが出ています。これはハノイのカーチュ―にとって何よりです。彼らの歌声を聞いて発見したのは彼らの多くが有名な芸人の歌声のテープをよく聞いて練習したということです。中でも、この世を去ったグエン・ティ・チュックなど、一流の芸人に似て歌える若いアーチストがいます。これは、一流の芸人の歌声をテープなどに収録した取り組みの成果です。また、現在、有名な芸人たちも、若者たちに教えるために全力を尽くしているようです。これは喜ばしいことです。」
国内外の観客にカーチュ―を紹介している芸人フン・ティ・ホンさん |
ホアイ 近年、ハノイはカーチュ―コンテストやカーチュ―フェスティバルなどを頻繁に行っています。これらのイベントは、若いタレントを発見する場であり、カーチュ―クラブが交流できる場にもなっています。
ソン カーチュ―の保存・開発事業を進めるためには、カーチュ―が歌える人はもちろんですが、それを楽しめる人、つまり優秀な観客の役割もとても重要です。それは、カーチュ―が生活の空間の中で存在することに役立つからですね。
ホアイ そうですね。ハノイ郊外にあるドンアイン県リエンハ地区は、昔から優れたカーチュ―芸人の出身地として知られています。近年、この地区にある学校はカーチュ―を課外活動に取り入れています。
ソン そういう取り組みにより、リエンハ地区では、カーチュ―は劇場やイベントだけで歌われることなく、日常生活でよく歌われるようになっています。リエンハ地区を模範にしてハノイの各学校に広げるようとの意見が相次いでいます。ベトナム音楽発展センター所属カーチュ―クラブの担当者フン・ティ・ホンさんは次のように話しました。
(テープ)
「子供たちにカーチュ―を今までよりも接触させるよう提案します。中でも、学校の課外活動に入れることは、子どもが早い時期からカーチュ―に接触することにつながると思います。これは、カーチュ―の保存・開発にとても重要なことです。」
ソン そして、ハノイは、カーチュ―クラブのメンバーに公演の場を提供し、ハノイ市民にカーチュ―の無料公演を楽しんでもらうために、いくつかの公の場所でカーチュ―の公演を定期的に行っています。その中で、最も見る人を引き付けているのはハノイ旧市街のマーメイ通りフォントゥオン神社ですね。
ホアイ そうですね。この神社は、伝統音楽の空間づくりを目指すハノイの取り組みの一つです。ここでは、週末に、カーチュ―を含む伝統音楽の披露会が行われます。現在、ハノイ旧市街には、週末に伝統芸能を紹介する空間が8か所ありますが、これらの空間はオープンだという特徴がありますね。
ソン そうですね。見る人は、ステージへ上がって演じる人と歌ったりするなど演じる人と自由に交流することができるからです。この芸能をより多い人々に紹介する場が多くなることはカーチュ―の芸人たちにとって何よりです。フーティというカーチュ―クラブの担当者ヴ・ティ・トゥイ・リンさんは次のように話しました。
(テープ)
「私たちの最大の願望は、カーチュ―を頻繁に披露することができるという多くの空間が設けられるということです。年1回大規模なカーチュ―フェスティバルを開催することはいいですが、それより重要なことは、小さい場所でもいいですから、少なくとも週1回カーチュ―を歌えるということです。」
ソン カーチュ―が歌われている15の地方の中で、ハノイはカーチュ―クラブも芸人の数も最も多い地方です。また、ハノイは、この芸能を市民の生活に普及させることにおいても成功していると評されています。しかし、ハノイのこれからの課題は、カーチュ―の現状を把握・分析した上で、カーチュ―の保存・開発戦略を立てることです。
ホアイ こうした取り組みにより、世界無形文化遺産カーチュ―は昔のように、多くのハノイ市民の精神生活にとって欠かせないものになるでしょうね。ではおしまいに、一曲お送りしましょう。 (曲)
「 」をお送りしました。今日のハノイ便りは、伝統芸能カーチュ―の保存・開発に対するハノイの取り組みについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。