ベトナムの体験ツアー

山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。

山崎 この前、おしゃべりタイムで、日本での旅行の話をしました。今日のハノイ便りは、ベトナム観光がテーマですね。

ソン はい。この20年、ベトナムを訪れる外国人観光客が増えています。ベトナム観光総局の統計によりますと、昨年、2014年にベトナムを訪れた外国人観光客の数は790万人に達しました。これは2013年と比べて4%増えています。

山崎 日本からの観光客はどうですか?

ソン 前の年と比べるとおよそ7%増えて、65万人になっています。中国と韓国に次いで、多くなっています。

山崎 中国と韓国からの旅行者は、よくハノイの街中でも見ますね。やっぱり多いんですね。

ソン そうですね。いろいろな観光ツアーがありますが、ここのところ、地元の人の普段の生活を体験するものが、人気となってきているんです。

山崎 ホームステイみたいなものですか?

ソン 地元の人の家に泊まるものもありますが、日中訪れて、その地域や村の生活を味わうものもあります。今日のハノイ便りは、その体験ツアーについてお伝えします。

山崎 体験ツアーはベトナム全土にあるということなんですが、具体的にはどの辺ですか?

ソン はい。北部の山岳地帯に住む少数民族の生活を見聞きできる避暑地のサパ、東北部の漁師の生活を体験できるクアンニン省のクアバン漁村、世界遺産と共に地元の雰囲気を肌で感じられる中部のホイアン、川と暮らす人々の生活を体験できる南部のメコンデルタなどが挙げられます。

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ホイアンで畑仕事を体験した欧米人観光客(写真:baovanhoa)

山崎 いろいろありますね。中でも、何が人気でしょう?

ソン 南部のメコンデルタは、体験ツアー好きの観光客に好評ですね。「田舎で魚釣り」や「メコンデルタで農業体験」といったものです。

山崎 日帰りのツアーですか?

ソン はい。都会の喧騒を離れてちょっとのんびりしたい、自然を満喫したいという人向けです。午前中にホーチミン市内から車で出発、現地に到着後は池で釣りを楽しみます。その後、収穫した魚を使って、地元の料理に挑戦です。自分で作った昼食の後は自由行動になります。ハンモックで昼寝もいいですし、メコンデルタならではの原風景をボートに乗って楽しむ、というようなこともできます。

山崎 あわただしいスケジュールが苦手な人には、こういうゆったりとした時間を過ごせる体験ツアーはいいですね。

ソン そうですね。時間があれば、日帰りより泊まりがけでの方がよりゆっくりできますね。ベトナム全土にある体験ツアーですが、村を挙げてこういった観光に取り組んでいる地域をご紹介しましょう。

山崎 東北部のクアンニン省にあるイエンドゥック村ですね。2011年から、村の体験ツアーを行っているそうです。

ソン ハノイから世界遺産のハロン湾へ行く途中にある村、という地理的に有利なこと以外、イエンドゥック村はベトナム北部に数千ある他の村と変わったところはありません。

山崎 稲作の田んぼや小さい池、赤い瓦葺の家など、ベトナム北部の典型的な村だということですね。でも、村のシンプルな日常生活が外国人観光客を引きつけているんですね。

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イエンドゥック村にあるベトナム北部の典型的な家

ソン はい。村の人たちは、毎日、畑仕事をしていますが、お客さんが来れば、ガイドや、コック、歌手などに変身します。

山崎 訪れた人たちは、村民の生活を体験することができるそうです。村人と一緒に田植えをしたり、竹でできた専用のカゴで魚を獲ったりするそうです。また、地元に伝わる民謡や水上人形劇などで、地域の文化にも触れることができます。

ソン 赤い瓦葺の家でくつろいだり、地元ならではの料理を堪能したりと、通常の観光ツアーとは一味違った旅行になりますね。

山崎 イエンドゥック村農業協同組合の組合員で、農業の傍ら、副業として村の体験ツアーガイドをしているグエン・バン・ヒエンさんは、初め、どうして自分の村が外国人観光客に人気なのかわからなかったそうです。村の素朴さに人々が魅かれるとわかってからも、どのように観光業に取り組めばいいのか悩んだそうです。

(テープ)

「自分は農業しかやっていなかったので、サービス業はできないと思いました。でも、大変でもがんばろうと思い直してやってみました。この辺りから出たことがない、いわゆる田舎者なので、初めは外国人観光客にどう接したらいいのかわかりませんでした。態度とか、笑顔とか、服装とか、いい印象を持ってもらえるよう、いろいろ勉強しました。」

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ガイドさんとして活躍している農民

山崎 イエンドゥック村の農業協同組合の組合員は30人います。その全員が村の体験ツアーの仕事に携わっています。グエン・ティ・フォンさんは英語が上手で、メインの観光ガイドとして活躍しています。

ソン 外国人観光客が、村の生活を理解して楽しいひと時を過ごすために、言葉は重要です。そのため、フォンさんは週3回ほど、組合員を対象に英会話教室を開いています。

(テープ)

「みんなに英語を教えるのはとても大変でした。でも、お客さんと英語でしゃべることができると楽しいとわかってから、みんな一生懸命勉強しています。自信を持って会話ができる人も結構います。外国人と英語でコミュニケーションが取れているのは、自分自身でも驚いているようです。お客さんも、村での滞在が楽しくなっているみたいです。」

ソン 観光に関する知識を持たない村の人たちですが、自分たちの村や生活だからこそ、訪れた人たちにそのありのままを紹介するだけで魅力的なんですね。組合長のズオン・ティ・メンさんの話です。

(テープ)

「村の住民は、他から来た観光ガイドよりいいと思います。一般のガイドさんは本などで村のことを調べると思いますが、ここの歴史や文化、習慣などを一番わかっているのは、やはり村の住民です。お客さんを案内する時には、思いを込めていろいろな話ができます。これからも、住民には英語をはじめとして、体験ツアーを受け入れるのに必要なことを伝えていきます。」

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イエンドゥック村で魚釣りを体験している欧米人観光客

ソン イエンドゥック村を訪れる観光客は年間およそ8千人で、体験ツアーは村の安定した収入源になっています。村に住む人たちにとって、体験ツアーは収入を増やせるものというだけでなく、故郷に対する誇りを高めるものとなっているようです。

山崎 村の歴史や習慣、民謡などを覚えようといういい流れになってきているということです。時間がある時には、住民が集まって村の歴史などに関するクイズを行っているそうです。

ソン また、村の環境保護や伝統の保存に対する住民の意識と人のつながりを強めるという効果もあります。村人たちはその素朴さを保ちつつ、少しずつ観光業のプロに近づいているようです。

山崎 オーストラリアから来た観光客の話です。

(テープ)

「ここの人たちのサービスにびっくりしました。熱心に迎えてくれて、特別なVIPになったような感じがしています。また必ずここに来たいと思います。」

山崎 素朴さとプロ意識。こういったツアーの理想の形ですね。それを兼ね備えた地元の人たちの生活を体験できるツアーは、持続可能な発展につながると思います。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、地元の人たちの生活を体験できるツアーをご紹介しました。それでは、今日はこのへんで。


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