ベトナムの読書事情


ベトナムの読書事情 - ảnh 1
(写真: vietnamnet.vn)


山崎
  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。

山崎 今日のハノイ便りの話題は、「ベトナムの読書事情」ということなんですが。

ソン はい。最近はスマートフォンやタブレットなど、情報を集めるのにどんどん便利になっている一方で、若者の活字離れが問題になっています。

山崎 それは日本でも言われています。毎年行われている読書に関する調査で、1年に1冊以上本を読む人の数が減少傾向にあるそうです。恥ずかしながら、私もあまり読んでいません。

ソン でも、ベトナム人より日本人の方が読書していると思いますよ。日本に駐在していた時に、電車の中で本を読む人を結構見かけました。

山崎 今は、携帯をいじっている人の方が多いかもしれないですけどね(苦笑)。

ソン ベトナムでは、公の場で、特に若者が本を読んでいるところはあまり見かけないんです。スマートフォンばかりです。

山崎 確かに、コーヒーショップなどで何人かで連れ立って来ているのに、それぞれで携帯をいじっているのを見ると、何しに来ているんだろうと思います。これはベトナムだけでなくて、世界的にそういう傾向なんじゃないですか?

ソン そうかもしれませんね。でも、本をはじめとして印刷物というのは、社会と経済の発展にとって必要なものだと思います。

山崎 そうですね。本は単に知識を得るものではなくて、そこからいろいろ自分で考えるという思考のトレーニングになりますからね。もちろん、難しいことだけでなくて、趣味としての読書はストレス解消にもなります。

ソン そうなんです。でも、インターネットやスマートフォンの普及で、本を読むということが減ってきたのが現状です。ある調査によると、フランスなどの先進国では年間平均読書数は20冊以上なんですが、ベトナムはわずか4冊です。ちなみに近隣国のシンガポールは14冊、マレーシアでは10冊となっています。

山崎 これはベトナムのメディアにも大きく取り上げられているということですが、逆の意見もあるそうです。ハノイにある出版社社長(グエン・マイン・フン)の話です。

(テープ)

「ベトナムの読書事情について悲観しすぎているんじゃないでしょうか?今は読書文化を構築中だと思うんです。ベトナム人の読書量は他の国と比べると少ないですが、それは生活水準の違いによるものだと思います。昔に比べて今現在の読書量はかなり増えましたし、これからも増えると思います。」

山崎 なるほど。ベトナムは活字離れではなくて、逆に増えているんですね。

ソン そう言われてみれば、そうかもしれません。ベトナムでは昨年、およそ2万種類の書籍が発刊されて、その部数は2億8千万部にのぼっています。電子書籍も2700種類、発刊されました。その3年前、2012年は、1万6500種類の書籍が1億9千万部の発刊でした。

山崎 やはり増えているんですね。ベトナムの人がよく読んでいるものは、どんな種類の本ですか?

ソン 3年前にベトナムの有力日刊新聞が行った調査によると、よく読んでいるものとして、漫画、短編小説、外国の小説、国内の小説、詩という順番でした。

山崎 一番は漫画なんですね。うーん、読書と言えるか微妙ですね(苦笑)。

ソン 私も驚きました。確かに日本の漫画はベトナムで流行っていて、若者に人気があります。ドラゴンボール、ワンピース、名探偵コナン、犬夜叉、キャプテン翼など、挙げればきりがありません。ベトナムの漫画業界も成長してきたので、読者は多いかもしれませんね。

山崎 まあ漫画は別のような気がしますが、先ほどの出版社社長が言っていたように、読書に対してそんなに悲観的にならなくてもいいかもしれませんよ。

ソン いえ。ベトナム人の年間平均読書数はまだまだ少ないですし、若者に関してはそれ以下の数です。好んで読んでいる本の種類もちょっとどうかと思います。

山崎 どんな種類なんですか?

ソン 例えば、暴力や性をテーマにしたものが少なくないんです。最近では、恋愛をテーマにした日本で言うライトノベル、ロマンス小説も若者に人気です。ライトノベルは、文学的にも教育面からも全然価値がない安っぽいものだという批判が出ています。

山崎 厳しい評価ですね。でも、若者に受け入れられているということはそれなりにおもしろいのかもしれませんよ。20代の大学生2人に話を聞いています。

(テープ)

「科学や経営などの本より小説の方が好きです。どこにでもいるような普通の人が主人公でも、読んだ後に何となく考えなければならないような小説を読みたいです。」

「ロマンス小説は早く読めるんです。勉強で忙しい時などでも、気分転換に読みます。ストレス解消になります。恋愛に興味があるので、今の私にぴったりです。」

ソン それぞれの読者のニーズは違うということですね。でも、質の高い本作りは大切です。

山崎 そうですね。ハノイにある文学作品専門の出版社社長(グエン・アイン・ヴ)の話です。

(テープ)

「出版社は、様々な読者の需要に応えなければなりません。娯楽として気軽に読める本がいい人もいれば、研究者や学生向けの本は専門的な知識が絶対条件です。娯楽から専門家の研究まで、すべてのニーズに応えなければなりません。重要なのは、低レベルのものを出さないようにすることだと思います。また時代の流れで、電子書籍を重視する時が来たとも思います。」

山崎 おととし、2014年にベトナム政府が4月21日をベトナム読書の日に制定したということなんですが、なぜ4月21日なんでしょう?

ソン 4月23日が、ユネスコの決めた世界図書・著作権デーになっているのにちなんで、4月21日になったようです。この日には、ブックフェスティバルや本の見本市など様々なイベントが行われます。地方では、村への本棚設置運動や本のフリーマーケットなども行われます。

山崎 国を挙げての取り組みは、それなりの結果が出るのではないでしょうか。これからのベトナムの読書事情に注目ですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナムの読書事情についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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