山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナム在住のフランス人の写真家、リハン・クロックビエル(Réhahn Croquevielle)さんをご紹介します。
山崎 私もそうですけど、ベトナムに住んでいる外国人は多いですよね。会社から派遣されてきた駐在員とその家族や、自分でビジネスをしている人もいます。
ソン そうですね。ベトナムが好きという理由でベトナムに住む人も多くなっています。
山崎 そのリハンさんもそうなんですか?
ソン はい。リハンさんはフランスのノルマンディー出身です。撮影のため、世界32カ国を訪れたというリハンさんですが、現在、ベトナム中部のホイアン市の旧市街に住んでいます。永住の予定です。
山崎 どうしてホイアンに決めたんでしょう?
ソン 多分、趣のあるホイアン旧市街の雰囲気と人々の親しみやすさだと思います。
山崎 リハンさんは、ベトナムはもう長いんですか?
ソン まず、2007年に慈善活動のため、初めてベトナムを訪れました。
山崎 ボランティアか何かですか?
ソン その前から里親として、2人の孤児に援助していたんですが、その2人が住むホイアン旧市街を訪れるためでした。そこでベトナムに引きつけられたそうです。
山崎 じゃあ、それ以来、ホイアンに住んでいるんですか?
ソン いえ。一旦フランスに帰るんですが、その後、毎年、ベトナムに来たんです。そして、ホイアンを始め、ベトナムをテーマにした多くの写真を撮るため、2011年に永住を決めて、ホイアンにやって来ました。2人の里子も養子に迎えて、一緒に住んでいます。自分のアーティストネームも、リハン・ホイアンと変えました。
山崎 それだけ、ベトナムとホイアンへの思い入れが強いんですね。いろいろな写真が撮れたんじゃないですか?
ソン はい。リハンさんは多くの場所に足を運んで、ベトナムの人と風景をカメラに収めました。どこに行っても、親しみやすいベトナムと出会えたそうです。特に、人の写真を多く撮ったということです。
山崎 ポートレートですね。リハンさんに話を聞いています。
(テープ)
「顔写真を撮りたいんです。人の表情というのは、二度と出会うことができない一瞬です。風景写真の場合は、同じ時間に同じ場所に行けば、大体同じ様なものを撮ることができますが、顔写真は違います。顔はその人の人生を物語っています。自分は、いろいろな人の人生の物語を収集させてもらっているんです。」
山崎 リハンさんは10年間にわたって、バイクでベトナム各地を回りました。撮影した写真は5万枚以上になるということです。その中のおよそ150点が、リハンさんの初めての写真集に収められました。写真集のタイトルは「ベトナム・Mosaic of Contrasts~対比のモザイク」です。
ソン リハンさんは、54の民族が共に住むベトナムの多様な文化に興味を持っています。ベトナムは写真集のタイトルのように、「対比の絵、装飾美術」のようだということです。急速に発展してきていても、伝統的文化が保存されていることを実感すると言います。
山崎 リハンさんにはアシスタントがいるそうですが、その女性がリハンさんの撮る人物のポートレートについてコメントしています。「そこには、一つのストーリーがある」というんですね。
ソン リハンさんは自分が撮影した人たちにお礼を兼ねて、贈り物を持って会いにいくそうです。どんな長い道のりでも全く気にしません。リハンさんのアシスタントの話です。
(テープ)
「リハンさんは、人の写真を撮るだけではないんです。その人達を再び訪れて、お礼を言います。可能であれば、援助もします。自分の写真に写る人達がよりよい生活を送れるよう望んでいるんです。」
ソン リハンさんが撮った写真の多くは、アメリカの月刊誌、ナショナル・ジオグラフィックやアメリカの日刊紙、ロサンゼルス・タイムズなど世界の有名な雑誌や新聞に掲載されています。
山崎 すごいですね。リハンさんは世界的に有名だったんですね。
「隠された微笑」(写真:リハン)
ソン そうなんです。特に、「隠された微笑」というタイトルの写真は、世界の多くの写真雑誌や電子新聞に掲載されました。「世界で最も美しい老女の写真」と評価されました。
山崎 どんな写真なんですか?
ソン ホイアン旧市街を流れる川で船を漕ぐ、73才の女性の顔を撮ったものです。そのおばあさんの笑顔が「年齢を超越した、永遠の微笑」と言われているんです。
山崎 船を漕ぐというと船頭さんをしているんですよね?力のいる重労働だと思いますが、それでも笑顔で写真に収まるというのは、芯が強くて優しさあふれるベトナム女性をよく表していますね。
ソン そうですね。リハンさんは「この女性は年齢を重ねているけれども、いつも明るくて可愛い。しわくちゃの両手は年を隠せないが、その自然な表情は非常に魅力的な被写体であって、その眼差しを見ると自分の幼い頃を思い出す。」と話します。
山崎 単なる写真のモデルではなくて、もう家族のような感じなんでしょうね。自分の本当のおばあちゃんのように思っているんじゃないでしょうか。
(写真:Hoang Minh)
ソン そうかもしれませんね。今年3月8日の「国際婦人デー」には、この写真をベトナム女性博物館に寄贈することにしました。ベトナム女性博物館館長の話です。
(テープ)
「リハンさんがこの写真をどこかに贈るのは、今回が初めてではないということですが、この写真を受け取る場所として、女性博物館が一番相応しいと思います。この写真はベトナム女性の美しさを示しています。芸術的価値の他に、ベトナム人の強い精神を表している写真だと思います。」
ソン リハンさんは、不自然なポーズの写真は撮りません。人間の本質や魂が滲み出た瞬間を撮りたいそうです。
山崎 その人の本当の姿を撮りたいんですね。今でも、ベトナム中を回っているんですか?
ソン はい。様々なベトナムの人とふれあう旅を続けています。写真展も計画しています。テーマは、「隠された微笑」です。
山崎 その写真展では、ベトナム全土で撮影された人物のポートレート、顔写真が紹介されるんですね?
ソン そうです。リハンさんは、ベトナムは第2の故郷だと言っています。リハンさんにとって、ベトナムはインスピレーションの源のようです。
山崎 感じるものがあるんでしょうね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ベトナム在住のフランス人の写真家、リハン・クロックビエルさん、アーティストネームはリハン・ホイアンさんについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。