山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りはベトナム音楽が話題です。
山崎 私もだんだん詳しくなってきました。
ソン そうですよね。ハノイ便りでも毎回1曲ご紹介してますし、アンさんと担当している日曜FMでも、ベトナム音楽のコーナーがありますからね。
山崎 そうなんです。あ、ここでちょっとコマーシャルしていいですか?ベトナム在住の方向けに、ベトナム国内のFMで聴ける日曜FMは、インターネットラジオだと世界中どこでも聴けます。日本にいても聴けますので、ぜひアクセスしてみてください。
ソン そうですね。毎週日曜、ベトナム時間の午前11時30分から30分間の放送です。VOV日本語放送のホームぺージから「直接聴取」をクリックすると聴けます。
山崎 日本時間だと午後1時30分からになりますね。よろしくお願いします(笑)。ベトナム音楽に戻りましょう。
ソン はい。音楽は文化を作っているものの1つですから、音楽を聞くとその国への理解が深まるというのはあると思うんです。
山崎 そうですね。ベトナム音楽の歴史はどこから始まるんでしょう?
ソン ベトナムの最初の国家とされるバンラン時代から始まったと言われています。
山崎 バンラン国は、紀元前1000年ぐらいでしたか?
ソン はい。この時代に作られた銅でできた太鼓があるんです。
山崎 なるほど。それで、その辺りから、ベトナムの音楽史が始まったと考えられているんですね。
ソン そうです。バンラン時代の後、ベトナムはおよそ千年にわたって中国の支配下に置かれました。そのため、ベトナムの音楽は、中国の伝統音楽の影響を受けました。
山崎 どんな特徴でしょう?
ソン ペンタトニックを中心に作られていました。
山崎 ペンタトニック。私は初めて聞きました。何ですか?
ソン 5 音音階というもので、1オクターブが5つの音の音階になってます。
山崎 普通は、ドレミファソラシドが1オクターブですけど、それが5音なんですね。
ソン そうです。日本にも童謡や民謡などペンタトニックの楽曲は多いそうですが、“こぶし”のような装飾音の使い方がベトナムと日本で違うので、聞いた印象がベトナム音楽は独特と言われます。
山崎 装飾音。飾る音ですね。
ソン はい。音を揺らしたり、付け加えたりすることです。
山崎 中国の影響は受けているけど、ベトナムの独自性があるんですね。
ソン そうなんです。ベトナムの宮廷音楽「ニャーニャック」が、ユネスコの無形文化遺産になったことは、それを証明しています。
山崎 そして、伝統音楽だけでなくて、ベトナムには、様々な民謡がありますね。クアンホ、ドンカータイトゥーなどがそうですよね?
ソン はい。ハノイ便りでもご紹介してきました。現代では、伝統音楽の人気はあまり、なんですが、民謡や民族音楽が好きな人達は多いです。
山崎 そうですね。どの世代でも聴く人は聴いてますね。でもやはり、今風の音楽が、若い世代には人気なんじゃないですか?
ソン はい。そのベトナムの現代音楽は、西洋音楽から発展してきました。
山崎 西洋音楽がベトナムに入ってきたのはいつ頃でしょう?
ソン フランス植民地主義の影響で、1930年代になると、西洋音階が使われるようになって、新しいベトナム音楽が生まれました。
山崎 西洋音階は、今の一般的な音楽で使われるものですか?
ソン そうですね。1オクターブに7つの音が含まれる音階です。この音楽は「新音楽」という意味を持つベトナム語、タンニャックと呼ばれました。
山崎 伝統音楽と区別するための、新しい音楽という意味ですね。
ソン そうです。恋愛などをテーマにしたエレガントなメロディーの曲です。この新しい音楽、タンニャックは多くの人に受け入れられて、たくさんの名曲が生まれました。
山崎 やはり、いつの時代でも新しいものというのは目を引きますね。それが単なる興味で終わらずに、音楽の流れとなったんですね。
ソン そうなんです。そして、もう一つの音楽がありました。フランスの植民地時代、独立を目指す若者たちを中心に、愛国的な歌が作られました。
山崎 言われてみれば、ベトナムの古い曲には、軍歌みたいなものが多いですよね。ベトナム国歌の題名も「進軍歌」ですもんね。
ソン そうです。特に、ベトナムが1945年に独立を宣言してから、その傾向が強まって、「革命音楽」という意味の言葉、ニャックカックマンと呼ばれる音楽となりました。
山崎 日曜FMでやっているべトナム音楽のコーナーでも「それまでの革命をテーマにした曲から新しいものが生まれた」というような紹介があったりして、この流れだったんですね。
ソン はい。ニャックカックマン、革命音楽は、30年にも及ぶフランスとアメリカとの戦いで、ベトナム人の心の支えになったと言えます。
山崎 流れとしては、新しい音楽のタンニャックと革命音楽のニャックカックマンは同時進行だったんですか?それとも、新しい音楽の次に革命音楽ですか?
ソン どちらもそうと言えるかもしれません。1954年から1975年までベトナムは南北に分断されたので、北部では革命音楽が流行っていて、南部の各地では、欧米の影響で、ポピュラー音楽が人気だったようです。
山崎 ポピュラー音楽というのはどういう感じでしょう?
ソン 山崎さんは、チン・コン・ソンは知ってますか?
山崎 この人の名前はVOVで何回も出てきますね。国民的作曲家ですね。
ソン そうです。チン・コン・ソンの曲は、その日本語版が日本のドラマの主題歌にも使われて、ヒットしたんですよ。
山崎 知りませんでした。いろいろなところで日越がつながっていますね。
ソン そうですね。1975年に南北ベトナムが統一された後は、旧南ベトナムで人気だったポピュラー音楽の多くの曲は演奏禁止になりました。政府が、革命音楽しか認めなかったんです。
山崎 それはいつまで続いたんでしょう?
ソン 1986年のドイモイ、刷新政策で音楽も自由化されました。特に1990年初めから、欧米のポピュラー音楽が一気に入ってきました。ベトナムの作曲家たちもポピュラー音楽を作ったり、若い歌手もたくさん出てきました。
山崎 そして、今に至る、ですか?日本のポップスがJポップ、韓国だとKポップ、ベトナムはVポップなんですよね。
ソン はい。Vポップは、ニャックチェーと呼ばれていて、若者音楽を意味します。
山崎 ハノイ便りで最後にお送りする1曲でも、若い世代のアーティストの曲は、Vポップですよね?市場は大きくなってきているんですか?
ソン うーん、ポップス関連では、Kポップがブームかもしれません。韓国のスターがベトナムでコンサートを開いたりしています。
山崎 何年か前にハノイで行われたKポップのライブに、うちの夫も行ってました(笑)。
ソン そうですか(笑)。Kポップアーティストは、ベトナムの若い歌手のお手本のようになっています。ファッションやスタイル、踊り、歌い方などをまねています。
山崎 それに比べると、Jポップはまだまだなんですね。
ソン そうですね。Jポップが好きなのは、日本語を学んでいる人や日本文化に興味を持っている人に限られています。最近は、インターネットからAKB48などが知られていますが、Kポップとは比べ物になりません。
山崎 あらら、寂しいですね(苦笑)。イベントなどでは、日本のアイドルが出演することもありますけど、なかなかコンサートを行うまでは難しいかもしれませんね。でも今日は、ベトナム音楽の歴史がとてもよくわかりました。勉強になりました。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナム音楽のこれまでをご紹介しました。それでは、今日はこのへんで。