山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。先月、静岡県浜松市のとやま・よしひろさんから「ホーチミン元国家主席についての番組を作ってくれるとうれしいです」というメッセージを頂きました。
山崎 そうですね。おしゃべりタイムの中でご紹介しました。
ソン そこで今日は、昨年VOVが放送したホーチミン元主席についての特別番組とその制作担当者の話をご紹介します。
ホーチミン元国家主席の遺言書
山崎 この特別番組は、何か賞を取ったんですよね?
ソン はい。昨年、2014年のベトナム国家報道賞のラジオ部門で一位となった番組なんです。番組テーマは、ホーチミン元主席の遺言でした。
山崎 元主席が亡くなってから、既に45年が経っていますけど、まだまだ影響力がありますね。
ソン はい。その番組は昨年8月末に3日連続で生放送されました。計3時間の特別番組だったんですが、リスナーからおよそ600件の電話がありました。
山崎 600件、すごいですね。
ソン そうなんです。まず、特別番組のテーマになったホーチミン元主席の遺言をご紹介します。
山崎 はい。ホーチミン元主席は1960年代に入って、自分の健康状態から遺言について考え始めたそうです。1965年5月に、レポート用紙3枚の遺言を自らがタイプ、それが正式な遺言書とされています。その後、1968年と1969年に計7枚のレポート用紙に手書きの補足文を記しています。亡くなる4ヶ月前まで書いていたんですね。
ソン 遺言書の初めには、アメリカとの戦いでは多くの被害を受けたものの、必ず勝利する、と書かれています。そして、民主主義の重要性が説かれています。民主主義があって初めて、国の豊かさや公平性、文化の発展、幸福が実現できる。民主化は共産党内から始まり、社会全体に広げられるべきである。人民こそ全ての源であるという思想がない限り、国づくりを成功させることはできないという内容になっています。
山崎 自分の葬儀については、時間と費用を節約するため、大規模なものにしないよう書いています。また、火葬後は北部、中部、南部に分骨して埋めてほしい。石碑や銅像を立てず、後に森林となるよう植樹してほしいと望んでいます。
ソン こうした遺言をテーマに、VOVのニュース専門チャンネルの記者6人が、特別番組を制作しました。計3時間にわたったその番組には、ホーチミン元主席に近い、また、遺言に詳しい人、そして一般市民などからもさまざまなエピソードが寄せられました。
山崎 ここで一曲お送りしましょう。ホーチミン元主席をテーマにした曲ですね。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
山崎 昨年放送されたホーチミン元主席の遺言をテーマとしたVOVの特別番組。制作に携わった一人、ドー・ベト・ガーさんによりますと、同じテーマの報道作品がたくさんあったことから、VOVでは、若者をはじめとするリスナー向けに、新しい角度、視点からホーチミン元主席の遺言にせまったそうです。
ソン 番組の準備には2ヶ月が費やされました。構成を練り、元主席の研究家や親しくしていた人への取材などを行いました。遺言の真意と考えを明らかにしたかったとガーさんは話します。
(テープ)
「取材の段階で、人々に対するホーチミン元主席の思いがわかるストーリーを見つけなければならないと思いました。遺言からも読み取れますが、実際のエピソードから元主席の人となりを伝えていきたかったんです。遺言にあったのは単なる言葉ではなく、ホーチミン元主席そのものを表していたと思います。」
特別番組の風景
ソン 番組では、元主席と関係が深かった人たちへもインタビューを行っています。取材した記者たちは「歴史の証人と話ができた」と感慨深かったようです。記者の一人、バン・フォン・ホアさんの話です。
(テープ)
山崎 「ホーチミン元主席に関する多くのエピソードの中でも、リスナーに何かを感じてもらうものを選ぶ必要がありました。その中で、ファム・バン・ドン元首相の逸話に、1番心を動かされました。元主席の側近の物語には、リスナーからも多くの反応が寄せられました。」
ソン この他にも、ホーチミン元主席の秘書、ブー・キーさんのエピソードもリスナーの共感を得ました。特別番組では、歴史的にも非常に貴重な資料が放送されました。ベトナム労働党がホーチミン元主席の死去を告げたラジオ放送、1969年に行われた元主席の葬儀で当時のレー・ズアン労働党書記長が元主席の遺言を読み上げたものなどです。
山崎 番組で進行役を務めたVOVの記者、ホアン・チュン・ズンさんは放送から1年経った今でも、番組放送中に感じた思いをはっきりと覚えていると言います。ズンさんの話です。
(テープ)
ソン 「当時の録音テープは、何とも言えない感じでした。その時にタイムスリップして、その現場で聴いているという感覚でした。また、取材した人の話やリスナーからのメッセージで、ホーチミン元主席に対する人々の思いもわかりましたし、元主席の遺言の本当の意味もわかったような気がします。」
山崎 3日で計3時間放送されたこの特別番組には、およそ600件もの電話がリスナーから寄せられたそうです。VOV、ベトナムの声放送局の生放送番組への反応としては、過去最高記録ということですよね?
ソン そうです。制作した記者たちにとって、大変喜ばしい出来事となりました。大きな励ましにもなりました。再び、番組の構成と台本を担当したドー・ベト・ガーさんの話です。
(テープ)
「電話をかけてくださったリスナーの中には、ホーチミン元主席についての詩を読んだ人もいれば、泣きながら自分の気持ちを語った人もいました。聴いている人たちの思いとインタビューで聞いたかけがえのないストーリーは、制作者の私たちの心にも響きました。スタッフ一同、真摯に番組を送出しました。」
ソン 番組は大成功を収めました。ホーチミン元主席の遺言を検証するだけの内容ではなく、それに対する人々の思いがあったからだと評されています。
山崎 もちろん、他の見方もあるかもしれませんが、この反響の多さは、ホーチミン元主席の影響力がまだまだ強いことがわかりますね。おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、昨年放送されたホーチミン元国家主席の特別番組とその制作担当者の話をご紹介しました。それでは、今日はこのへんで。