給湯機能をもついろりシステムの開発・販売で起業するテーイ族の青年
(VOVWORLD) - 北部山岳地帯イエンバイ省ヴァンイェン県で生まれ育った少数民族テーイ族出身のグエン・ヴァン・フインさんは、起業に成功した代表的な青年の一人として知られています。彼が開発した給湯機能をもついろりシステムは山間部の住民の生活に利便性をもたらすとともに環境保護にも役立っていると評価されています。
給湯機能をもついろりシステムを紹介しているフィンさん |
ハノイから北西へ約200キロ離れたところにある山岳地帯イエンバイ省ヴァンイェン県はテーイ族やザオ族、モン族などの少数民族多数が暮らしている地方です。少数民族はいろりで薪をおこし、防寒用・煮炊き用に火をたく習慣があります。伝統的ないろりはたくさんの熱を生み出しますが、実際に煮炊き用に使われる熱は少なく、残りの熱は無駄になります。その無駄に気づいたフインさんは、いろりで薪の燃焼によって生み出された無駄な熱を利用してお湯を沸かせるかどうかを研究することにしました。
23歳のフインさんは社会福祉を専攻して短期大学を2016年に卒業したばかりですが、給湯機能をもついろりシステムの開発で起業することにしました。中古のバイクを売って得られたわずか250万ドン(日本円で1万3千円)と、友達に借りたお金を資金にしました。資金不足のせいで使用済みの鉄板やビニールパイプ、鉄パイプ、給水栓などの利用を余儀なくされました。
さまざまな研究・開発を重ねた結果、フィンさんは、給湯機能も持ついろりシステムを作れるようになりました。このシステムでは、薪の燃焼によって生み出された熱が煮炊き用のほか、パイプを通して屋根に置かれた貯水槽に届きます。貯水槽の中の水はわずか5分~7分ぐらいで熱いお湯になります。この貯水槽は断熱タンクなので、煮炊きしてから48時間以内の断熱が可能です。フインさんは次のように話しました。
(テープ)
「私のアイデアは、我が家を含む地元の人々がお湯をたくさん使っていることから生まれたものです。皆は給湯システムを使う時、その初期投資とランニングコストを気にします。そのため、低い初期投資とランニングコストをはじめ、地元の現状に適当なシステムが作れれば、いいなぁと思って現在の商品を作りました」
業務中のフィンさん |
フィンさんのこのシステムにより、地元の人々は毎日煮炊きをするだけで、お湯を簡単に沸かすことができます。いろりで直接沸かすより、このシステムの方がお湯を沸かす時間が早いのです。また、電気温水器やガス給湯器と比べて、感電やガス爆発もなく、とても安全です。そして、初期投資とランニングコストの面では比べものになりません。ヴァンイェン県アンティン村に暮らすグエン・ヴァン・ドアンさんは次のように話しました。
(テープ)
「このシステムを使ってから6、7年経ちましたが、いろりと貯水槽はともに安全です。容積62リットルの貯水槽を使っているので、家族全員が十分にシャワーできます。また、宴会などの時も、このお湯はとても役に立ちます。お湯を沸かす時、薪がたくさん必要ではありません」
最初に作られたシステムは構造や機能が単純でしたが、その後システムはいろいろ改善され、好評を得ています。給湯機能を持ついろりシステムのほか、薬草風呂に使われる薬草を薪で炊くシステム、薪を燃料とするサウナシステム、お酒を造るシステムもつくれるようになりました。そして、人力による田植え機もつくりました。人力とはいえ、摩擦推力はわずか3キロ~6キロだけです。特に、その田植え機はとても安くて、多くの農民が買い求めました。
給湯機能をもついろりシステムについていえば、フィンが設立した農業サービス協同組合は年間約2400台生産しています。同組合の年間利益は約20億ベトナムドン(日本円で1100万円)以上に上っています。また、協同組合の設立により、25人の従業員のほか、村の数十人がパートとして雇用されています。そのほか、同組合は北部山岳地帯の各省の若者と協力してこれらの省で42の代理店を開いています。ヴァンイェン県アンティン村の青年同盟のチャン・チョン・ルアット委員長は次のように語りました。
(テープ)
「フインさんはヴァンイェン県、ならびにアンティン村の青年にとって起業の手本となっています。起業に成功した彼は、青年への雇用創出をはじめ、村の社会経済開発に大きく貢献しています。これから、フィンさんを手本にして起業に成功する青年がたくさん出てくることを期待しています」
起業してから8年が経ちましたが、フィンさんは依然として、山間部の人々の生活に利便性をもたらす商品の開発に夢を持ち続けています。フィンさんの話です。
(テープ)
「これからも、商品のデザインや品質、生産性を高めるために力を入れていきます。また、中部高原地帯テイグエン地方で市場開拓を進めるとともに、開拓された市場でのアフターサービスを充実していきます」
今までの成功により、フィンさんは、「2022年農民科学者」や2016年のイエンバイ省の代表的な青年として顕彰されたほか、全国の若者の創造フェスティバルの表彰状なども受けました。これらの表彰はフィンさんにとって山間部の人々の生活に利便性をもたらす商品の開発を継続するための励ましとなっています。