身体障がい者の権利保護

(VOVWORLD) - 前は、身体障がい者は慈善活動の対象者で、社会に対してはどうしても受け身になっていました。今は、住むところや仕事、趣味までも自分のことは自分で決められるという状況になっています。
身体障がい者の権利保護 - ảnh 1

山崎 こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、体の不自由な人たちの権利の保護についてお伝えします。

山崎 前にアンさんと話した時、ベトナムで体に障がいを持つ人の数は多いと聞いた事があります。

ソン そうですね。ベトナムの労働傷病軍人社会事業省によりますと、2015年6月現在の統計では、その数はおよそ700万人で、総人口のおよそ8%となっています。その中で、重い障がいを持っている人はおよそ30%います。また、障がい者のおよそ60%が女性で、子どもはおよそ30%、高齢者が10%となっています。

山崎 そういった人たちへのケアは、ベトナムではどうでしょう?

ソン はい。いろいろ考えられています。国連の障がい者権利条約に、ベトナムは2007年7月に署名して、2014年11月に批准となったので、それ以降、特によくなってきたと言われています。

山崎 日本では、障がい者の権利に関する条約と言われていますが、日本は2007年9月にこの条約に署名して、2013年12月に批准しました。この障がい者の権利に関する条約は2006年12月の国連総会で採択されたもので、国際人権法に基づくものとなっています。

ソン はい。それぞれの人が持つ権利、人権ということをベースに考えられた条約です。障がい者に関する法律は、福祉やケアなどについてのものが多いと思いますが、それとは違う視点です。

山崎 条約に書かれた一般的な原則として、障がい者の尊厳、自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加があります。今までは、障がいを持つ人は弱者で支援が必要という概念が、どんな人でも等しくすべての権利があるという考えですね。

身体障がい者の権利保護 - ảnh 2

ソン そうです。前は、「体が不自由なんだから、働かなくてもいい。助けるから。」と考える人も多かったかもしれませんが、障がい者権利条約では、すべての障がいを持つ人には働く権利があるとなっています。

山崎 考えてみれば、この考えは当然のことなんですけど、改めて言われてみると、目から鱗という感じがします。

ソン そうですね。それをわかりやすく話してもらっています。体に障がいを持つ女性(グエン・ティ・ラン・アイン)の話です。

(テープ)

「これはベトナムだけでなく、世界でも新しい見方で、障がい者に大きな影響を与えています。前は、私達は慈善活動の対象者で、社会に対してはどうしても受け身になっていました。今は、住むところや仕事、趣味までも自分のことは自分で決められるという状況になっています。私自身、障がいを持つ人がそれぞれの能力を発揮できる場所を作る、という自分の夢を実現できました。」

ソン この女性が代表を務める行動センターは、2011年に設立されました。体の不自由な人たちが活躍できるような環境づくりに取り組んでいます。

山崎 精力的ですね。でもご自身の経験から、状況もいろいろわかるでしょうね。仕事をするための環境作りですか?

ソン それもありますが、例えば、ベトナム南中部にあるカインホア省の16歳の男性の話をします。この男性、ブイ・ゴック・ティンさんは目が不自由なんですが、音楽の才能がありました。カインホア視覚障がい者協会や行動センターの支援によって、ティンさんは色々な楽器を演奏できるようになりました。

山崎 へえ。仕事紹介やその支援的なものかと思いましたけど、より深い活動というか、その人の持っているものを最大限に伸ばすセンターなんですね。

身体障がい者の権利保護 - ảnh 3 ブイ・ゴック・ティンさん

ソン はい。ティンさんは、ドラム、ギター、オルガン、伝統楽器など14種類の楽器を演奏できるようになったんです。

山崎 すごいですね。音楽、楽器のセンスがあったんですね。普通の人が一つの楽器を習うのも大変なのに、お見事です。

ソン そうですね。演奏できるというより、うまいんです。ティンさんは、視覚障がい者の大会はもちろん、多くの一般の大会で、普通の演奏家と競い合って、賞も獲得しています。

山崎 何の楽器でしょう?14種類?

ソン いえ。ギターですね。14種類の中でもギターが得意ということです。

山崎 体に不自由なところがあっても、特別な才能がある人というのは珍しくないですよね。そういうのを見聞きすると、自分はもっともっとがんばらなくてはと思います。

ソン そうですね。そして、そういった人達が活躍できる環境を作ることが課題です。

山崎 本当ですね。ティンさんについて、ベトナムの伝統音楽を研究する専門家(チャン・ヴァン・ケ)が話しています。

(テープ)

「ティンさんはまだ若いのに、いろいろできるのは素晴らしいです。将来、優れた演奏家になるはずです。耳もいいですし、学習意欲も高いですから。これから、いい先生について、才能を最大限に発揮して演奏テクニックを上げていってほしいです。」

山崎 ティンさんは、まだ音楽の勉強中なんですか?

ソン いえ、既に音楽で生計を立てているということです。

山崎 支援した行動センターすごいですね。労働、働くことは、全ての人の権利ですからね。

ソン そして、このインターネットの時代は、そこからの情報を受けるというのも、もう基本的な権利になっているかもしれません。

山崎 そうですね。障がいを持つ人にもパソコンやインターネットができるように、いろいろな工夫がされているんですよね。インターネットの文字を音声で聴けるようなソフトがあったり、点字を表示できたりするものがあるとか。

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ソン ピンディスプレーですね。パソコン関係では、ベトナムでは、今年3月から、視覚障がい者向けのIT教室がホーチミン市で行われています。ホーチミン視覚障がい者図書館とマイクロソフトベトナム社の共催です。

山崎 特別なコンピューターを使うんでしょうか?

ソン はい。参加者に、視覚障がい者向けのタブレットが配られます。インターネットの文字情報を点字にするものです。

山崎 それは便利ですね。技術の進歩はすばらしいです。目の不自由な人もインターネットができるんですね。

ソン そうです。このプロジェクトは来年の3月までホーチミン市で実施されます。好評であれば、他の地方でも展開されるということです。ホーチミン市にある視覚障がい者図書館館長(グエン・フオン・ズオン)の話です。

(テープ)

「この活動の最も大きな意味は、世界の貴重な知恵や文化に接するチャンスを視覚障がい者に提供するということです。目が不自由でも普通の人と同様にパソコンを使えなければ、時代遅れになります。その不平等をなくしたいと思ってこのプロジェクトを行うことになりました。」

ソン 体が不自由でも、学習や労働、自己研鑽など人間の基本的な権利が尊重されるのは当然ですね。

山崎 みんなに等しく、同じようにあるものですからね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、体の不自由な人達の権利を守るということについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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